人は誰でも死を迎えるときがきます、寿命によって天寿を全うする人もいれば不慮の事故に巻き込まれて人生半ばにして命を落としてしまう人もいるでしょう。そんな命の循環システムは既に生まれたときから運命付けられていたと考えている人もいると思います。命というものをテーマにしたメディア作品を紹介している作品は本当に様々存在しています、死という宿命から抗うためにもがき苦しむ道を選ぼうとするような題材をテーマにしている作品も存在しています。そんな中において描かれるのは、やはりこの世への未練があるということでしょう。誰しも死ぬときに何かを考えるといいますが、それは人によってそのときまでに歩いてきた道のりで後悔などをしている場合に心残りを持っている場合には強く情念として残るのかもしれません。それは実際に死に瀕した人にしか分からない情景ですが、死を覆してまでやり遂げようとするような重いに駆られることもひょっとしたらあるのかもしれません。
命、それも輪廻転生という生まれ変わりを題材にした物語が数多くある中で今回ご紹介するのは2012年7月7日に公開した映画『スープ~生まれ変わりの物語~』という作品があります。タイトルからしてすぐに命、しかも輪廻転生に関する内容なんだなぁと誰もが一瞬で見当が付く作品となっています。実際に映画館でご覧になった人もいるかもしれませんが、こちらの作品についての簡単なあらすじからまずは紹介して行きましょう。
妻との離婚をきっかけにしてから娘との関係も気まずくなってしまい、何をするにしてもやる気の起きないインテリアデザイナーとして活動している渋谷健一はある時、ちょっとしたいざこざから娘に対して手を上げてしまう。仲直りをすることもないまま翌日彼は上司である綾瀬由美と共に出張先である渋谷へと出向いていた。信号待ちをしているとき、世闇を切り裂くように降り注ぐ雷が二人を直撃する。何が起こったのか分からない二人が目を覚ました場所は見たこともないところだった、そこで初めて会った人に言われて二人は気づきます。自分達は人としての生を終えることになってしまったということに。
いきなりすぎる自らの死を受け入れることの出来ない渋谷に対して、一方の綾瀬はそこまで悲観することなく死後の世界を満喫するように過ごしていた。渋谷はひたすら死を受け入れないのは、現世に残してきた娘の美加のことが気がかりで仕方なかった。仲直りも、謝罪も出来なかったことをひたすらに後悔しているとき、死後の世界である話を聞くことになる。それは伝説のスープと呼ばれる、生まれ変わることの出来るスープが存在しているという話を聞いた。但し、生まれ変わると同時に前世の記憶を失ってしまうためにそれでは意味がないとして飲むことをひたすらに拒み続けている渋谷は、何とかして前世の記憶を引き継いだまま生まれ変わる方法を探し始める。
その頃現世では、突然の父親との死別に徒然と現実を受け止めようとしている美加だったが彼女もまた父親に何も言えないまま永遠の別れをすることになってしまったため、彼女にも心残りが出てしまった。そうしたわだかまりは現実世界で人間トラブルを招き寄せるなどの問題も起こしてしまい、彼女もまたどうしたらいいのか分からなくなっていた。出来ることならもう一度父に会いたい、そう願っても叶うことはないと自分に言い聞かせながら大人へと成長していくのだった。
現世で時間が経ったある時、美加は自分が思いを寄せる相手との結婚式を控えていた。教会で花嫁衣裳に身を包み待っていると、そこに現れたのは一人の男子高校生だった。知り合いに高校生などいない美加は疑問に思うが、その手には以前自分が父親の墓に置いた花そのものだった。その花を持って現れた男子高校生は告げる、生前は足せなかったことをようやく長い時間を掛けて出来ると思い、生まれ変わった渋谷は美加とようやく再会し、和解と共に祝福の賛美を送るのだった。
生と死の作品を取扱う内容についていうなら、最終的にはハッピーな終わり方をしていることが良点といえるでしょう。暗い話になりがちなところを時にコミカルに、時に感情きわまる表現で人間の生と死についての群像激を描いている作品となっていますので、そういったヒューマニズムも思わせる内容も非常にいい作品となっています。この作品は確かに脚本などが優れている点もそうですが、作品に出演している演者さん方も現在の日本演劇界において指折りの実力者が揃って出演していることも魅力でしょう。俳優さん希望で映画をご覧になっている人もいると思います、なんといっても主演がテレビドラマなどにおいて個性的ながらその存在感を圧倒的なまでに作品内で主張している『生瀬勝久』さんというのも非常に大きな点でしょう。この人の演技は出演しているだけでその存在は例えサブでも主演級とも思わせる覇気を持っています。
生瀬勝久さんがこれまでに出演してきた作品ですがご存知の方も多いと思いますが、実はこんな人気作品に出演していたというのを知っていますか?
この二つの作品において強烈な存在感を持って脇を固めていたということを知らない人は惜しいことをしていました。私はトリックから存じていましたが、その頃から凄い個性的で魅力のある俳優さんだなぁと思いながらドラマを見ていましたが、現在のテレビドラマ界では生瀬さんのような非常に味のある演技をできる若手の俳優さんは残念ながらいないと、個人的に思っています。生瀬さんの演技力には多くの方面から評価されているはずなのですが、生瀬さんがテレビドラマシリーズにおいて初めて主演作品を持ったのは意外にも、2010年にトリックではまり役だったスピンオフ作品『警部補 矢部謙三』が初めてというんですから驚愕ものです。3年というまだそれほど時間の空いていないときにようやく主演です、しかも映画作品においてはこちらのスープが映画初主演なのですから、どうして個々まで機会に恵まれなかったのも不思議なくらいです。
劇中でも生気の感じないサラリーマンとして生きていた主人公が娘にもう一度会いたいというひとつの願いを必死にもがく姿を、見事なまでに演じきっているところはさすがというところです。どうして今までスポットライトを浴びることがなかったのが不思議なくらいですが、そのおかげで非常に独特で日本演劇界において必要不可欠な存在ともいえるような役者さんになっていることは事実でしょう。
もちろん生瀬さん以外にも助演出演している小西真奈美さんや、脇には山口紗弥加さんや古田新太さん、さらには松方弘樹さんといった個性的且つ実力ある俳優さんが縁の下を持ち上げつつ、若手からは橋本愛さん、野村周平さん、広瀬アリスさんといったまだまだ演技力には上記に述べた方々と比べたら劣っていると思いますが、時間がたてばもしかしたらとんでもない役者さんへとトランスフォームする可能性を持っているともいえるでしょう。
以上のような作品を表現するために集められた役者さん達がいるからこそ、定番となってしまっている生まれ変わりをテーマにしている、人間味溢れながらもどこかで消えることのない親子の絆を示している内容を、一時も乱すことなく見事なまでに表現しきっている作品といえるでしょう。頻繁に題材にされていることもあって、コメディやホラーなどにも利用されていることが多いですが、感動系の作品として考えた場合同一のテーマの中でも上位の作品としてみても何らおかしくないでしょう。
作品を実際に見た方々も大半が題名からは中々連想されなかったテーマに対して、非常に味のある作品ということで好評価を貰っているのでそれだけ監督などの裏方、表立って作品を盛り上げくれる役者さんたちによってこの作品はようやく完成されたものとして公開されたのです。決してメジャーな作品とは言えないのも認めるべき事実でしょう、ですが役者さんたちは命を込めて表現している内容としては十分に評価するに価するものとなっているのは確かです。もしかしたらこの作品で今まで大事な何かを忘れてしまっているような事をこの作品を診たことで思い出すということもあるかもしれません。何処にでも溢れているような内容の作品ではなく、時にはこういったメジャーではないマイナーな邦画作品を見るのもいいのではないでしょうか。
輪廻などの死生観については様々な見解を巻き起こすことになるテーマとなっています。
世界的にどのような考え方となっているのか、世界各地に根付いている死生観について考察をしてみましょう