そんな中で、何食わぬ顔で自分の演技を完遂した羽生結弦選手は見事だった。今の羽生選手は4回転ジャンプも3回転のような軽さで跳んでいる。軸が細く、タイミングを完璧につかんでいるので必要以上にパワーも使わない。ジャンプの余裕が滑り全体にも好影響をもたらしていて、後半になるほどにどんどんスピードも増していた。個人戦を前に金メダルを争うパトリック・チャン(カナダ)にも相当なプレッシャーを与えることに成功したのではないか。
■層の薄いアイスダンス、ペアも健闘
日本チームの全員が持てる力を発揮すればメダルに手が届くのではないかと期待していたが、それでも5位という成績は健闘と言いたい。表彰台に立ったロシア、カナダ、米国の3カ国と日本には決定的な違いがあるからだ。カップル競技(アイスダンスとペア)の層の薄さである。
基本的にカップル競技とシングルでは滑るラインなどが異なるため、危険で同じリンクで一緒に練習することはできない。だから、シングル中心の日本では練習場を確保するのも容易ではない。一方で海外にはカップル競技専用のリンクが多くあり、共用リンクでも時間をしっかり割り当てられている。アイスダンスの選手だった私も7年間、フランスに拠点を置いていた。競技会ともなれば何十組ものペアが出場してくる。
昨年12月の全日本選手権に出場したペアはソチ五輪代表の高橋成美、木原龍一の1組だけ、アイスダンスもキャシーとクリスのリード姉弟を含む4組だけだった。そうした環境を考えれば、海外のトップスケーターたちと同じリンクに立っだけでも評価に値する。ペア結成1年の高橋、木原組は五輪の舞台にも気後れすることなく演技していたし、SPでポイントを取ったことでチームのフリー進出にも貢献した。リード姉弟のツイズルも美しかった。
ジャンプの転倒もあれば、足が止まりかける局面もあった。羽生結弦選手自身も百パーセント満足できる演技ではなかったかもしれないが、この日ばかりは金メダルという結果が全て。日本のフィギュアスケート界に身を…続き (2/15)
リンクサイドに出場10カ国の応援席が作られた舞台は、国際スケート連盟が2009年から開催している国別対抗戦と同じだった。静寂と緊張が支配するいつものリンクと違い、団体戦ならではの盛り上がる雰囲気が伝…続き (2/10)
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