バリ島沖事故:「洗濯機のように回り」…古川さんが証言

毎日新聞 2014年02月18日 19時06分(最終更新 02月18日 22時07分)

 【サヌール(インドネシア・バリ島)佐藤賢二郎】「水面が洗濯機のように回り出した」−−。インドネシア・バリ島沖のダイビング事故で、救助された5人のうちの1人、インストラクター古川さおりさん(37)が18日、報道各社の書面インタビューに応じた。急な天候悪化でボートを見失った後、複雑な潮流に流されて漂い、枯れ葉の水滴をすすってのどの渇きをしのいだことなど、事故の生々しい様子を証言した。

 7人は潮流に乗って移動するドリフトダイビングをしていたが、古川さんによるとダイビング開始直後は天気や海流は穏やかだった。だが、浮上直前に急変。強風と波、豪雨で視界が悪化した。

 7人を乗せたインドネシア人船長は毎日新聞の取材に「合流地点で待っていたが、7人は来なかった。悪天候で地点を見失ったのではないか」などと語っていた。だが、古川さんは「(浮上すると)ボートのエンジン音が聞こえ、ホイッスルで合図した。一時的に視界がかなりきかなかったが、方向は把握していた」という。

 遭難後も7人はパニックに陥ることはなかった。島影やコンパスを頼りに現在位置を把握。7人とも体を結び合うなどして一緒だった。メンバーの意識が遠のきそうになるときは、励まし合い、流れてきたココナツで渇きをいやした。ただ潮流が急で、島に泳いでたどり着くのは難しかったという。

 15日午前、近くにタグボートを見つけたため、古川さんが代表して助けを求めに泳いだ。「できる限りのダッシュ」で泳いだが気付かれず、残りの6人とも離ればなれになった。

 同日夕、島の岸壁に流れ着いた。助けを呼びに行きたかったが「目の前は大波と潮流の激しい海、後ろは断崖絶壁で、体力的にも身動きがとれなかった」。古川さんは、枯れ葉の水滴をすすったり、ペットボトルの中に残った飲料を飲んだりして、命をつないだ。保温のため、拾った発泡スチロールを体に巻き、岩陰で雨をよけた。

 17日、駆け付けた救助隊の声を聞いて「意識がはっきり戻った」。依然行方不明の2人について「心配で夜も寝付けなかった。自分が直接動けずにとても悔しい。全員が一刻も早く見つかることを祈っています」と結んだ。

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