尖閣諸島:侵攻ある?ない? 可能性を探る
毎日新聞 2014年02月18日 15時53分(最終更新 02月18日 18時39分)
シミュレーションの続き。「反日過激派の独断で政府は関与していない」との中国の言葉に欺かれた日本政府が自衛隊の出動をちゅうちょする間に中国が尖閣諸島の「実効支配」を世界に宣言。ついに日本政府も奪還を決断し武力衝突へ。航空機の性能やパイロットの能力に優れた日本側が制空権を握り、海戦にも勝利して尖閣を奪い返す。「現状では自衛隊が優勢だが、そもそも中国側にその気を起こさせないようあらゆる準備をすべきです」と川村さん。
「グレーゾーンの事態への対応の必要性が認識されている。自衛隊が十分な権限でタイムリーに対応できるか、法整備で埋めるべき隙間がないか、十分な検討が必要だ」。4日に開かれた首相の私的懇談会「安全保障の法的基盤の再構築に関する懇談会(安保法制懇)」で安倍晋三首相はそう発言した。武装集団に対して自衛隊が出動する場合、相手が外国の軍隊であり、その国の戦争の意思がはっきりしていれば自衛隊法の「外部からの武力攻撃」に該当し、首相は武力が使える「防衛出動」を命じることができる。一方、偽装漁民のように正体不明の武装集団による破壊活動は、同法の「一般の警察力をもっては治安を維持することができないと認められる場合」に当たり「治安出動」が適用される。このケースは警察活動の延長と解釈されるので武器の使用は制限される。
実際、1978年には中国沿岸から約100隻の漁船が尖閣諸島周辺に押し寄せ、その多くに機関銃が装備されていた。安倍首相が「グレーゾーン」の一つと指摘したのはまさに川村さんの想定したようなケースであり、安保法制懇はこうした事態への対処を検討している。
そもそも中国に尖閣上陸の意思があるか、疑問視する声がある。「尖閣諸島には飛行場も港湾もない。最大の魚釣島ですら大規模な部隊を駐留させ維持するだけの大きさがない。そんなところを中国が攻める戦略的な意義を見いだすのは難しい」。軍事評論家の神浦元彰さんはそう見る。上陸部隊への食料の補給をどうするのか▽日米安全保障条約が発動し在日米軍が介入したら▽中国同様、尖閣諸島の領有権を死活問題と考える台湾の攻撃をどうかわすか−−といったハードルがあるからだ。