尖閣諸島:侵攻ある?ない? 可能性を探る

毎日新聞 2014年02月18日 15時53分(最終更新 02月18日 18時39分)

国有化された尖閣諸島。手前から、南小島、北小島、魚釣島=沖縄県石垣市で2012年9月、本社機「希望」から
国有化された尖閣諸島。手前から、南小島、北小島、魚釣島=沖縄県石垣市で2012年9月、本社機「希望」から
西部方面普通科連隊が2006年に公開した離島防衛のための上陸訓練=長崎県佐世保市の陸上自衛隊相浦駐屯地で
西部方面普通科連隊が2006年に公開した離島防衛のための上陸訓練=長崎県佐世保市の陸上自衛隊相浦駐屯地で

 日本政府は2002年に離島防衛を主な任務とする西部方面普通科連隊(長崎県佐世保市)を創設するなど離島防衛強化を進めているが、神浦さんは「米ソ冷戦期に日本ではソ連軍が北海道に侵攻するという説がありました。だが『なぜ北海道にだけ侵攻してくるのか』を明確に説明できる人はいなかった。それと同じで政府は都合のいい想定で自衛隊の存在意義をつくり出そうとしているのでは」と冷ややかだ。

 元在中国日本大使館防衛駐在官で東京財団研究員の小原凡司さんも「中国による尖閣侵攻」には否定的だ。「中国が軍事力の拡張を続けているように見えるのは、グローバル化した自国の経済活動を保護するためです。その意味では、中東からの石油などの海上輸送路となる南シナ海の方が、東シナ海よりもはるかに重要です」と指摘する。

 2012年9月、国営通信新華社系のニュースサイト「新華網」はロシアの軍事専門家による中国軍の尖閣上陸シミュレーションを掲載した。それによると航空兵力は日中拮抗(きっこう)しているが、ミサイル艦を大量保有する中国軍は自衛隊の艦船に打撃を与え、日本側が中国の尖閣諸島上陸を阻止するのは難しい。しかし、米国が日米安全保障条約に基づいて介入する可能性が高く、そうなれば中国は撃退されるので「中国は軍事行動を控える」と結論づけている。

 また、中国政府管轄下のウェブサイト「中国網」は昨年3月、故・劉少奇元国家主席の息子で中国人民解放軍総後勤部政治委員の劉源・上将(大将)の発言を伝えた。習近平主席と同じ太子党(党高級幹部子弟)出身で習氏が信頼する軍人の一人とされる。そのインタビューで、緊張が高まる日中関係について問われた劉氏は「戦争とは何なのか。それはとても残酷なもので代価も大きい。別の方法で解決できるならば極端な暴力的手段で解決する必要はない」と非戦の考えを明らかにした。

 劉氏の発言こそが「中国の本音ではないか」とみるのは小原さんだ。「中国の尖閣諸島に対する戦略的な関心はむしろ薄く、日本側に中国を意識しすぎる面がある。自衛隊と中国軍対話のチャンネルはほぼ閉ざされており、信頼醸成こそが急務ではないでしょうか」。尖閣を「戦場」にしてはならない。

最新写真特集