日本美術の「カワイイ」に迫る2月18日 9時53分
今や海外にも広がる日本の「Kawaii(かわいい)」という文化。でも、いったい「カワイイ」って何でしょう。
日本美術を専門とする女性の学芸員たちが研究を重ね、1つの考え方にたどり着きました。
さて、あなたは何を見て「カワイイ」と思いますか。
海外で注目を集める日本のカワイイ
原宿発の若者ファッションや「きゃりーぱみゅぱみゅ」さん。そして、ほのぼのとした味わいの「ハローキティ」。
さまざまな日本発の「カワイイ」ファッションやキャラクター、ポップカルチャーが、海外で注目されています。
「カワイイ」という日本語は、今や欧米やアジア諸国でも、翻訳なしでそのまま通用することばになりました。
「Kawaii」を集めた展覧会
しかし、私たちはいったい何を見て「カワイイ」と感じるのでしょうか。
そんな疑問について、「日本の美術」をキーワードに考えてみようという展覧会が、東京・渋谷区の山種美術館で開かれています。
展示されているのは、室町時代から近現代までの日本画や工芸品およそ90点です。
共通するテーマは「カワイイ」もの。6人の女性学芸員が、山種美術館の所蔵作品だけでなく、国内のほかの美術館にも足を運んで厳選しました。
「カワイイ」は「ほっとできる」
江戸時代中期の絵師・伊藤若冲。最も有名なのは、代表作「動植綵絵」でしょう。
動物や植物を題材に、まるで図鑑のような、緻密で鮮やかな色彩の作品を残しました。
ところが若冲は、「カワイイ」と思える絵もたくさん描いているのです。
例えば、素朴な味わいの土人形を描いた「伏見人形図」は、七福神の1人の布袋様を題材にしています。
ふっくらとした体型に、ほっそりとした目と眉。シンプルに表現された穏やかな表情を見ていると、思わずほほえんでしまいそうです。
若冲は、こうした伏見人形を好んで題材として取り上げたといいます。
緻密な作品を生み出す作業の一方で、現代の「ゆるキャラ」のようなかわいさにも魅力を感じていたのでしょう。
「シンプルで、どこかほっとできる」。
山種美術館では、それが「カワイイ」ことの要素の1つだと考えています。
「ハローキティ」を思い出してみてください。温かい色づかいと単純な線で表現されたシンプルな表現が、「ほっとできる」味わいを出しているのです。
「カワイイ」は「柔らかい」
明治22年に生まれ、平成2年に101歳で亡くなった奥村土牛は、自然が持つ微妙な色彩を柔らかな色合いで表現した日本画家です。
桜を描いた「醍醐」や「吉野」などが代表作で、昭和37年には文化勲章も受章しました。
その土牛も、「カワイイ」動物を好んで描きました。
「兎」という作品は、大きな目を見開いて一心にどこかを見つめるウサギの姿を捉えています。
ゆるやかな曲線や、墨をぼかして描いた毛並み。さらに、絵の具を何十回も塗り重ねることで、ウサギの「ふわふわとした柔らかさ」を表現しています。
美術館では、こうした「柔らかさ」も、私たちが「カワイイ」と感じるための重要な要素だと指摘しています。
きゃりーぱみゅぱみゅさんも、ふわふわとしたフリルやレースを使った衣装や柔らかい色合いのメークで、かわいらしさを演出しています。
枕草子に見られる「カワイイ」の源流
「カワイイ」の歴史をさかのぼってみましょう。
山種美術館によりますと、古くは平安時代、清少納言が記した「枕草子」に、その例を見ることができるといいます。
清少納言は「うつくしきもの(=かわいいもの)」として「瓜にかきたるちごの顔」や、幼児のあどけないしぐさ、スズメの子、それに小さいひな人形の道具などを挙げています。
幼いものや、未完成なもの、そしてミニチュアのような小さいもの。「どこか未熟で、少しつたないもの」を「カワイイ」と捉える感覚が、すでに清少納言の時代からはぐくまれていたのです。
それは、リアルな描写や成熟したものに魅力を感じてきた西洋絵画の世界とは異なる、日本独特の感覚なのではないかと、美術館では考えています。
カワイイの秘密考えるきっかけに
今回の展覧会は、日本の「カワイイ」の魅力について、1つの考え方を提示しています。
山種美術館では「日本の美術作品を見てカワイイと感嘆することがあると思います。いったい何がそうした感覚を呼び起こしているのか。現代の『カワイイ』ファッションやデザインと照らし合わせて考えると、日本の文化について考えるきっかけになるかもしれません」と話しています。
展示会は来月2日まで開かれています(月曜は休館)。
[関連ニュース] 自動検索 |
[関連リンク] |
|