<はじめに>

「事実判断」「価値判断」は対となって使われる学問用語。
哲学、倫理学、論理学で使われている用語(のはず)です。

今まで何度かこの用語についてはネット上で書いてきました。
たとえばこれ↓

Togetter - 

感情は公理系:対立する主張がどちらも論理的なのは当たり前


 
今回はビジネス視点で、どんな風に考えれば、
チームメンバー間で 事実判断、価値判断の共有がしやすいかをまとめてみました。

この文章で言いたいことを最初にざっくりと言っておくと、
「人に説明するときに最初から主観で語るんじゃない!」ということです。



事実判断とは

「~である」という種類の判断
疑いようのない事実であることを判断すること

例:
「このデータベースは1秒に30コールできる性能を持っている」
「このウェブページのアクセス許容量は、
クライアントが求めている数値よりも大きな値である」
「人を殺してはいけないと法律で決められている」

特徴:
科学的方法や機械的検証で得られる結果は事実判断
数値的、もしくは「true or false」という形で明確に客観的な判断ができる
複数人での認識合わせが簡単(誰が見ても同じ結果になるから)



価値判断とは

「~すべき」「~したい」という種類の判断
義務/禁止、善/悪、好き/嫌いのような判断
主観的、常識的判断

例:
「 このデータベースは1秒に30コール できる性能しか持っていないので改善するべき 」
「 このウェブページのアクセス許容量は、
クライアントが求めている数値よりも大きな値であるので良かった
「人を殺してはいけない」

特徴:
「チームとして、会社として何を優先するべきか」という判断は価値判断
人によって基準は異なるので、個人個人で判断結果が異なることは当然
団体(政府、会社、チーム)で意見が一致しない場合は、
多数決などの方法でまとめる必要がある
いわゆる「決めの問題」というもの。



「事実判断/価値判断」と「団体の認識合わせ」の関係

まずは、「事実判断は認識合わせが簡単、価値判断は認識合わせが困難」という前提を
チームメンバーに知ってもらうことが大事。
そして、以下の順番で認識を合わせる。

1.必要な事実判断を合わせる
データベースの性能、サーバのスペック、利用者の要求などの事実を列挙して、
間違いがないかを複数人にチェックしてもらう。

2.団体としての価値判断を行う
事実判断が共有できても、価値判断を全員が合わせることは難しい。
なので、多数決、責任者の決定などの方法で、
個人の価値判断を団体の価値判断にまとめる。



例:「Aという案件をやるかやらないか」


<1.必要な事実判断を合わせる>

・  Aという案件をやるメリットは・・・
・   Aという案件をやるデメリットは・・・
・   Aという案件をやらないメリットは・・・
・   Aという案件をやらないデメリットは・・・

上記をすべて列挙する。

大事なのは、主観をなるべく入れないこと。
「誰がやっても同じメリデメリストが結果として出てくる」というものでなければいけない。
なぜなら、「誰がやっても同じ事実判断になる」ということを、
チーム全員が共有できることが目的であるから。
「やりたい/やりたくない」という個人的な意見は排除して考えなければいけない。

Aをやりたい人は「やるデメリット」「やらないメリット」を無視しがちなので、
無視しないように、主観を排除して、客観的に考えなければいけない。


< 2.団体としての価値判断を行う >

メリデメリストを見て、トレードオフが起こらず、明らかにどちらかが優れている場合は、
優れている方を選ぶ。

トレードオフが起こった場合は、やる方がいいかやらない方がいいかを、
チームメンバーにそれぞれ主観的に判断してもらう。

メンバーの主観をもとに、多数決もしくは責任者の決定によって、団体の意志決定を行う。