(2014年2月17日付 英フィナンシャル・タイムズ紙)
民主党のマッテオ・レンツィ書記長(左)は同党のエンリコ・レッタ首相(右)を退陣に追い込み、新首相に就く〔AFPBB News〕
マッテオ・レンツィ氏は自らの大志を果たす一歩手前まで近づいている。問題はそれを果たした後だ。
イタリアの新首相は、欧州で最も困難な仕事を抱えることになる。首相に正式に信認されたら、レンツィ氏は経済の根本的な問題を3つ抱えた国を治めることになる。この国は巨額の債務を抱えているうえに、経済が成長しておらず、うまく機能していない通貨同盟の一員でもあるのだ。
イタリアは、経済の面で抜き差しならない状況に置かれている。経済が成長軌道に戻れなければ、その債務負担はさらに膨らむだろうし、最終的にはユーロ圏にいられなくなるだろう。
新首相の仕事
新首相に課される仕事は困難なものかもしれないが、簡潔に言い換えることはできる。すなわち、上記の3つの変数のうち1つ以上を、禍根を残さぬように変化させるのが新首相の仕事なのだ。
何をしなければならないかについては、当然ながらいろいろな見方がある。ただ、現政権が十分な働きをしなかったという点では、ある程度見解が一致しているようだ。筆者自身は、改革に対するエンリコ・レッタ首相の冷淡さにずっと驚いていた。イタリアで総選挙が行われて1年、レッタ氏が首相に就任してから10カ月が経過しているが、大きな成果はほとんど上がっていない。
レンツィ氏は、レッタ政権はちゃんと働いていないと何度も口にしてきた。したがって問題は、これから何をしなければならないかをレンツィ氏が十分明確に把握できているかどうか、そして経済改革政策という沼地に入り込む同氏を支える国会議員が十分な数に達しているかどうか、というものになる。
前者については、筆者はまずまず楽観的だが、後者についてはそうではない。イタリアは何をすべきかという問いに対しては、経済改革と財政再建をセットで推進するというのが標準的な答えになっている。
この見方は完全に間違っているわけではない。イタリアでは、構造改革が必要だという主張に圧倒的な説得力があるが、筆者は、構造改革だけで十分なのだろうかという疑問を抱いている。
何と言っても、イタリア経済の不振は深刻だ。筆者の計算によれば、イタリアの国内総生産(GDP)は現在、1990年代のトレンドが続いた場合のそれを15%も下回っている。イタリアにダメージを及ぼしたのは金融危機ではなく、ユーロそれ自体なのだ。