五輪につきものの「ジャッジ疑惑」。
ジャッジにまつわるこうした「黒い噂」は、実は五輪のたびに必ず登場していると言っても過言ではない。だがその噂が単なる噂に終わったことも多かった。
1998年長野五輪ではアイスダンスで、数カ国のジャッジが結託してフランスを3位にし、カナダを表彰台から落とす、いわゆる「ブロックジャッジ」をした疑惑について、北米ではかなり大きく報道された。だがISUは「調査の結果、ジャッジに疑わしき点はない」という結論を出した。
ロシアが圧倒的な強さを誇っていた2006年トリノ五輪では、ペアと男子が終わった時点で、「4種目ロシアに独占させるわけにはいかないので、アイスダンスでは米国が優勝するだろう」という噂が関係者内で流れた。だが実際にはロシアが勝ち、ロシアの4種目全勝を妨げたのは他でもない、最後に行われた女子シングルで優勝した荒川静香だった。
わかりにくい採点方式に問題があるのか?
こうしたジャッジに関する不穏な噂が絶えないのも、現在の採点方式がわかりにくいからだという声もある。
だが実際にはこの採点方式になったのは、過去の6点満点方式が不透明で分かりにくく、順位の操作も容易にできることが問題となったためだった。より具体的でわかりやすく、不正ができない採点法が求められたのである。
そのきっかけは、2002年ソルトレイクシティ五輪ペア審判疑惑だった。
いまだ謎の残るソルトレイク五輪のスキャンダル。
ロシアのペアが優勝したが、そのわずか3日後に2位のカナダにも金メダルが与えられた、というあの異常な事件を一体誰が忘れることができるだろうか。
一般的にはその理由は「フランスのジャッジが、自国のアイスダンスを1位にするためにペアではロシアに入れるようプレッシャーを受けたと告白したため」と報道されている。
実際のところ、このジャッジの言うことはそれから二転三転し、プレッシャーが誰からどのように与えられ、本当に彼女の判定に影響を与えたのかなどは、現在でもよくわかっていないままなのである。
だが正式に調査も行われないまま、カナダに二個目の金メダルが与えられるという異例な処置がなされた。それは同時多発テロ直後で北米メディアが「正義」に対して過剰反応したこと、その過熱報道に北米企業が「五輪スポンサーを降りる」とIOCにプレッシャーを与えたことが大きかった。(余談だがこの詳細は拙著「氷上の光と影」(新潮社)に書いてある)
このように、ジャッジに関する疑惑というのは概して、選手やその演技の内容を置き去りにしたまま、大手メディアを巻き込んでどんどん雪だるま式に膨らんでいくことが多いのである。
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