2月14日、男子シングルのフリーで羽生結弦がトップを保ち、金メダルを獲得した。19歳の羽生は、男子五輪チャンピオンとして史上2番目の若さである。日本のフィギュアスケート金メダルは2006年トリノ五輪での荒川静香以来、2個目。男子としては史上初の快挙だ。だがその勝利への戦いは、決して楽なものではなかった。
「これが五輪というもの」とオーサー・コーチは言った。
「最初の4回転サルコウで転倒してしまい、続いた4回転トウループは降りたのですが、次の3フリップで失敗した。もう金メダルは遠ざかった、という気はしていました。後半になって足が重くなり、マイナスな気持ちが出てきてしまった。終わってから、今回は金メダルはないかなと思いました」
確かにベストな演技ではなかったものの、それでも最後まで崩れることはなく得意の3アクセル2度などをきれいに決めて全体をまとめた。
演技が終了すると、羽生結弦はしばらく氷の上にうずくまって動かなかった。少しして顔を上げると、すっきりと現実を受け入れたようなさわやかな笑顔を見せた。
公式練習ではずっと安定したジャンプを見せていたが、この五輪の大舞台ではやはり緊張したのだろう。「ユヅルは本当に緊張していた。足の感触もなくなるほどだったと思います」とコーチのブライアン・オーサー。
「キス&クライで、これが五輪というものだ、と私は言いました」
ミスの続いたチャン。本来の演技ができなかった。
パトリック・チャンがノーミスの演技をしていたら、逆転されていただろう。だが、続いたチャンも本来の演技ができなかった。2回目の4回転で手をつき、得手ではないアクセルでは2回ミスをした。フリーはわずか0.54の差だったが、総合280.09対275.62で羽生が金メダル、チャンが銀メダルという結果になった。
「ベストな演技ができなかったことは残念だったけれど、無事に滑り終えて肩の荷は下りた。自分の演技に集中して滑ろうと思った。(団体戦と合わせて)銀メダルを二つも持ち帰ることが出来て、すごく嬉しいです」
そう言いながらもやはり表情に力がなく、五輪王者の座を逃した失望を隠すことはできなかった。
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