中日新聞プラス
中日新聞 CHUNICHI Web
文字サイズ
紙面記事

3人娘 「日進月歩」真央フィナーレ 20日SP

フィギュア団体女子SPで演技する浅田真央=ソチで(内山田正夫撮影)

写真

 【ソチ=杉藤貴浩】国民的ヒロインが集大成へと跳ぶ。十九日(日本時間二十日)のソチ五輪フィギュアスケート女子ショートプログラム(SP)に臨む浅田真央(23)=中京大。天才少女と呼ばれた小学生時代から日本中の視線と期待を細身の体に背負い、時に挫折を味わいながらソチまでの道を歩んできた。華麗な演技と天衣無縫のキャラクターは、二度目の五輪で最高の笑顔を咲かそうとしている。

 「なぜこんなに表情が柔らかいんだろう」。フリーの写真家としてフィギュアを三十年近く撮り続けている菅原正治さん(60)は、レンズ越しに初めて浅田を見た日のことを覚えている。小六のころの小さなアイスショーだったが、観衆を前に氷上ではたった一人。「なのに彼女は笑顔だった。表情の硬い日本選手にはいない、特別な存在が出てきたと思ったよ」

 実際、十二歳で大技トリプルアクセル(3回転半ジャンプ)を決め、「いつか五輪に出たいです」とはにかむ浅田に世間は夢中になった。十五歳で迎えたトリノ五輪に年齢制限で出られぬ姿には、当時の小泉純一郎首相まで「どうしてか」と異例のコメントで同情。同五輪で金メダルに輝いた荒川静香さんとともに、フィギュアを国民的な人気スポーツへと押し上げた。

 天真らんまんな発言も愛されてきた。十四歳、国際大会で優勝した際は「これでトイプードルを買ってもらえる」。二十三歳になった今も、「得意なスポーツはバスケ。苦手なのは球技」と真顔で言い、図らずも笑いを誘う。マットレス、カメラ、ハム…。浅田を広告に使った製品は軒並み売り上げを伸ばした。

 ただ、何より共感を集めてきたのは、スケートへのひた向きな姿勢だった。

 「日進月歩」。浅田がファンへのサインによく書いてきた言葉だ。スポーツ選手の発言などを心理学的に研究する児玉光雄・追手門学院大客員教授(66)は、「うまくなりたい、うまくなると快感だという気持ちが強く、それを毎日確認したい選手。だからこそ、スランプや不運があっても厳しい練習を続けられる」と見る。王貞治さんやイチローにも通じる超一流の特徴だという。

 韓国のキム・ヨナに敗れ、銀メダルに涙を流したバンクーバー五輪から四年。今大会は団体戦で3回転半ジャンプをミスするなど苦い滑り出しとなったが、「一つ一つ階段を上っている」という今季の浅田。ソチでのステップを、列島中が見つめる。