安倍晋三首相が、世界経済フォーラム年次総会(ダボス会議)での各国メディア幹部らとの会合で日中関係を問われ、第1次世界大戦前の英独関係を引き合いに出して説明した。大戦を教訓に、衝突を避ける手段を構築すべきだという意味合いだったとみられるが、欧米メディアが「日中間の緊張が極度に高まっている」と受け止めて報道し、波紋が広がっている。

 菅義偉官房長官は24日午前の記者会見で「真意をしっかり伝えたい」と述べ、大使館を通じて発言の意図を海外メディアに説明する方針を明らかにした。

 会合は22日に主要メディアの幹部ら約30人が出席して開かれた。安倍首相は質問に日本語で答え、通訳が英語で伝えた。

 安倍首相は「日本と中国が尖閣諸島を巡り武力衝突する可能性はあるか」との質問に、「軍事衝突は両国にとって大変なダメージになると日中の指導者は理解している」と説明。そのうえで「偶発的に武力衝突が起こらないようにすることが重要だ。今年は第1次世界大戦から100年目。英国もドイツも経済的な依存度は高く最大の貿易相手国だったが、戦争は起こった。偶発的な事故が起こらないよう、コミュニケーション・チャンネル(通信経路)をつくることを申し入れた」と述べた。

 この発言を通訳が伝える際、英独関係の説明に「我々は似た状況にあると思う(I think we are in the similar situation)」と付け加えた。首相が英独関係を持ちだした意味を補ったとみられる。この通訳は、日本の外務省が手配した外部の通訳だったという。