山あい途絶 秩父・中津川の積雪「胸ぐらい」
| 雪で動けなくなった車を押す人たち＝１６日午後４時半ごろ、秩父鉄道長瀞駅前 |
１４日から１５日未明にかけて降り続けた記録的大雪。秩父市や小鹿野町の山間地域では１６日、集落の孤立が続き、高齢の住民が不安な時間を余儀なくされた。先週に続く週末の"白い脅威"。公共施設の損害も出る中で、後始末に追われる県民は疲れ切った表情を見せた。
奥秩父の山間地にある秩父市中津川では、積雪で道路が通行不能となり、２６世帯約３０人が孤立した状態になっている。高齢者が多く、自力での除雪作業もままならず、「早く道路を何とかしてほしい」と困惑が広がっている。
同地区で民宿を経営している山中三千恵さん（６４）によると、「こんなに雪が降ったのは生まれて初めて」という。１４日朝方から雪が降りだして、同日夕方には道路が通れない状態に。１６日に雪はやんだが、積雪は「胸の高さぐらいで、深い所だと首ぐらいまである」。ずっと家から出られない状態だったが、１６日に雪をかき出して、何とか隣家につながる道をつくった。
今のところ電気や水道などは問題なく、灯油や食料などの備蓄も十分。しかし、同地区は７０代以上の住民がほとんどで「６０代で若いほう」。除雪などで外部から人手を借りたくても、「道路が雪で封鎖されちゃっているから、ここに来る手段がない。今ここにいる人たちで助け合ってやっていくしかない」と話していた。
秩父市は１５日午前８時に災害対策本部を設置し同日午後５時２０分、市長が県危機管理防災部に自衛隊の派遣を要請した。
同災害対策本部のまとめよによると、１６日午後１時現在で、浦山、三峰、中津川、太田部で１５６世帯２７５人が孤立。伊古田、太田、品沢、みどりが丘、久那、吉田太田部、吉田久長で約５９５世帯が停電しており、大滝地区の約１４６世帯、荒川地区の一部約１０世帯が断水または断水している可能性がある。
通行止めは国道１４０号の宮平から雁坂トンネル間、県道中津川線、秩父多摩甲斐国立公園、県道秩父名栗線で発生しているほか、通行できない道路が多数あるという。
鉄道は西武線高麗―西武秩父間が運休しているほか、秩父鉄道が全線運休、路線バスも全線で運休。いずれも復旧の見通しは立っていないという。
市内全ての小中学校、公立幼稚園、保育園が１７日は休校・休園の予定。
また、県道中津川線では仏石山トンネル内で６台１５人、出合トンネル内で２台３人、国道１４０号黒文字橋付近で５台７人が、孤立して救援を待っている状況で、県の防災ヘリコプターが１５日夕、それぞれ食料と水を届けた。この際、黒文字橋付近では、具合の悪くなった女性１人が救助された。
大滝・太陽寺でも宿泊客８人、関係者２人が孤立しており、救援を待っている状況。だが、強風のためヘリコプターでの救助が困難で、救援の見通しは立っていない。