外国人客を送迎するモラードさん(右)。国際的な観光リゾートを目指し模索を続けている=白馬村で
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国内有数のスキー場がひしめく白馬村で、外国人観光客が急増している。歓迎の声がある半面、文化や習慣の違いからトラブルも目立つ。村は対策に乗り出し、宿泊・飲食業の外国人も組織をつくって協力する。「国際的な観光リゾートになるための過渡期」との指摘もあり、関係者は模索している。
「サンキュー」。スキーシーズン真っただ中、白馬パノラマホテルの前では、ホテルを経営するケビン・モラードさん(44)が、宿泊した外国人客を送迎するのに忙しい。村の統計では村内にはここ数年、四万〜五万人前後の外国人が宿泊している計算だが、「その二倍以上は来ているはず」とモラードさん。
村の統計には、外国人が経営する宿泊施設の宿泊人数はほとんど集計されていない。モラードさんは、百以上の宿泊・飲食施設を外国人が経営していると推測する。「北海道のニセコなどを訪れたオーストラリア人らが、国内の新たなリゾートを求め、白馬村の魅力に気付いて訪れるようになった」。
県の調査によると、一昨年の外国人宿泊客数は白馬村が県内市町村のトップ。急増に合わせるかのように、夜中に花火をしたり、深夜まで飲食をして騒ぐなどの迷惑行為の他、犯罪に手を染める外国人も目立ち始めた。
大町署によると、二〇一二年度は暴行や器物損壊、自動車盗など外国人が関係する事件や事故が三十一件発生。その後も同じようなペースで発生しているという。
村は署の呼び掛けに応じて昨年一月から「白馬村外国人共生対策会議」を開いて対応を進めている。花火の販売を自粛するよう店に働きかけ、花火を置かない店も出始めた。
モラードさんも宿泊・飲食業の外国人ら約四十人で昨年九月、「白馬国際経営者会」をつくり、村に協力する活動を始めた。村が外国人観光客向けにルールやマナーを知らせるちらしを作った際には英語表記を手伝った。
ニュージーランドから来たモラードさんは「オーストラリアでは花火は一部の州でしか売っていないなど環境の違いがある。大事故でも起きれば白馬の印象が悪くなる。法令順守も含めて関係機関に協力する必要がある」と訴える。
こうした「対策」だけでなく、「もてなし」の勉強会を開く動きも。八方尾根観光協会は昨年十一月から十二月にかけて五回にわたって「初めてのインバウンド入門セミナー」を開いたところ、宿泊業関係者ら延べ八十七人が参加した。
講師の丸山俊郎さん(39)は送迎方法や接客用英会話、情報提供の仕方などを教えた。総支配人を務める旅館ではこの冬のシーズンは既に昨年の同時期を上回る二千人の外国人が泊まったが、トラブルはなかった。
丸山さんは「今あるものを変えずに、地域の魅力を深く知ってもらうこと。身近に感じてもらい、互いに親しくなっていけばトラブルは起きづらいのでは。変化への対応はエネルギーがいるが、国際的な観光地になるための大事な時期。みんなでこの機会をつかんでいけたら」と話す。
(吉田幸雄)
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