2014年02月13日
2014-11 小中学校への「奨励金」について
今日の話題は、岡山県が平成14年度予算方針の中で打ち出した小中学校への「奨励金」について。この話、長くなりそうなので、2回に分けて投稿します。なお、以下の投稿は高橋個人の考えであり、私が所属、関係する組織、団体等の公式見解でないことを予めご了解ください。また、私は教育行政や教育現場に関しては全くの門外漢。専門的・具体的な話をする見識も能力もありませんので、さほど面白くもない一般論に終始することを予めお許し下さい。
まずは山陽新聞の記事のご紹介。http://town.sanyo.oni.co.jp/news_s/d/2014021022230144
岡山県は10日までに、学力向上や不登校、いじめの改善などに顕著な成果を挙げている小中学校30校に対し、各校が独自に活用できる「奨励金」を2014年度から交付する方針を固めた。県によると、全国初の取り組みという。
県内で学力低迷や“荒れ”が深刻化する中で、実績を挙げた学校を奨励してさらなる先進的な施策を促し、県内に普及させる狙い。
奨励金は小学校20校と中学校10校に100万円ずつ交付。各校の判断で設備や教材の整備、先進校への教員派遣などに活用してもらうことを想定している。交付する学校の選定基準は未定で、今後内容を詰める予定。
県教委が1月に発表した14年度当初予算要求には関連予算は含まれておらず、県が14日に発表する予算案に知事査定として3千万円を盛り込む見通し。
(山陽新聞WEBニュース 2014年2月10日)
まず結論めいた感想を最初に申し上げておくと(この記事以上の情報を持っていないので、かなり大雑把な印象論になりますが)、「奨励金」という制度を積極的に支持しようとは思わないものの、知事に強い思い入れがあるのであれば、「まぁ、やってみたらいいんじゃないの」という感じです。
100万円の奨励金とか、予算額3,000万円とか数字を聞くとオッと思いますが、岡山県の平成26年度当初予算要求額(一般会計)の目的別歳出を見ると、教育費は1,778億円。単純に割ると、「奨励金」関連予算の教育費全体に占めるウェートは0.02%です。教育政策全体の中でのウェートが極めて小さいうえ、これによって誰かに大きな不都合が起こるとは思えません。取り返しのつかないようなリスクを伴うわけでもなく、問題があれば次年度から止めればいいだけの話だと思うからです。
とはいえ、いろいろ疑問に思うことや問題提起しておきたいことはあるので、以下、思いつくままに列挙してみます。
まずは、「奨励金」というインセンティブの仕組みに関わるテクニカルな問題から考えてみます。この「奨励金」制度の議論は、そういう制度面の検討にとどまらず、組織の動機付けに関する問題や教育行政のあり方まで、相当話が広がる可能性がありますが、それは2回目の投稿にまわすとして、まずは以下に5点の指摘をしておきます。
一つ目は、「奨励金」の支給基準についてです。「実績があがった小中学校」を選ぶ際、その基準について、客観性、公平性、納得性が担保できるか、という点です。
二つ目は、「奨励金」を得ようとして不正を行う学校が出てこないかという点です。不正というのは、学力テストの際に先生が生徒の答案の不正解の回答を指で指すとか、成績の悪い子を休ませるとか、そういう直接アンフェアな行為だけでなく、いじめや問題行動が少なくなるようなカウントの仕方をするなど、現場の裁量の範囲で行われる細工なども含みます。
三つ目は、教員の人事異動の問題です。小中学校の先生は数年単位で異動するイメージがあります。もちろん、成果の出た取り組みを行った先生が全員変わるということはないでしょうが、責任者たる校長を含め、翌年に一定数の先生が当該校に残っていない可能性はおおいにあります。学校に対する「奨励金」制度が個々の教員に対するインセンティブとして十分に機能するのでしょうか。
四つ目は、学校の規模に関係なく「一律100万円」というのは適切かという問題です。児童数100名以下の小学校から1,300名を超える小学校まで幅がある中で、100万円の重みは学校によって相当違うはずです。
五つ目は、もらった100万円を学校が有効かつ適切に使いきれるのか、という問題です。自由に使えるお金を100万円ももらえると嬉しい半面、その使い方を誰がどのように決めるのか、使い方をめぐって生徒や保護者などからクレームが付いたらどうするかなど、現場にいろいろ悩ましい問題も生じるような気がします。まぁ、これは学校現場を知らない私が想像で言ってるだけなので、全くの杞憂かもしれませんが。
以上、「奨励金」制度のテクニカルな問題点を挙げました。このような課題は、現場の意見を聞いたうえで、いろいろ知恵を出し対策を考えれば克服可能かもしれません。ただ、素人がパッと思いついただけでもこれだけ問題点が浮かぶので、いろいろ検討すべき点はもっとたくさんあるのでしょう。より良い制度にしていくためにも、しっかりと検討をしていただきたいと思います。
というわけで、この話は次回へ続きます。