(2013年6月10日付 英フィナンシャル・タイムズ紙)
日本経済を復活させるための安倍晋三首相の賭けは、今週、これまでで最大の試練に直面する。10兆3000億円規模の財政刺激策を発表し、金融革命をやり遂げた後、安倍内閣は経済のサプライサイドを改革する計画を承認する。この改革は政治的には無理難題だ。構造改革は必ず大きな力を持つインサイダーに影響を与えるからだ。
しかし、「アベノミクス」を成功させるためには、改革に代わる道はない。マネタリーベースを倍増させる日銀の賭けは、いずれ国債利回りの上昇をもたらす。持続的な経済成長なしでは、日本の政府債務の山は手に負えなくなる可能性がある。
改革なくして金融革命は成功しない
日本の成長問題は構造的だ。労働市場は歪んでおり、女性と若者に不利になっている。企業は現金を過剰に溜め込んでおり、多くの場合、海外に眠らせている。制限の多い移民政策は、人口動態の見通しを悪化させている。
安倍氏は6月14日に一連の改革案を閣議決定する。一部の施策は役に立つ。不況時に余剰人員を継続雇用する企業に支払われる補助金を削減し、そのお金を技能訓練に振り向ける計画は、業種間でうまく労働力を配分する助けになるはずだ。
日本の労働市場は、失業率を抑え込む点では、うまくやってきた。だが、古くからいる労働者の過剰な保護は、企業が事業を再生させるための柔軟性を欠くことを意味する。
安倍氏は賢明な目標を掲げたが、いかにして目標を達成するかは、まだはっきりしていない。米国や欧州連合(EU)と新たな貿易協定を締結すれば、日本の活力に満ちた産業は強くなるだろう。しかし、例えば農家など、自由貿易により損失を被ることを恐れている人々からのロビー活動によって、協定の範囲が狭まり、有益な効果が減じる恐れがある。
残念ながら、安倍首相は最も野心的な改革を避けている。安倍氏率いる自民党にとっては、移民はいわば「立ち入り禁止区域」だ。企業の貯蓄に対する課税は議論されていない。課税すれば、企業は現金を投資に回したり、株主に還元したりするインセンティブを得るし、税金は国の債務を返済する有用な収入源になるだろう。
楽観的な向きは、来る7月の参議院選挙の後に、もっと大胆な改革が打ち出されると考えている。彼らは、支持率が高い時に波風を立てることは意味をなさないと言う。だが、日本で過去20年間にわたり変化を妨げてきた文化的、政治的制約は、結局、克服できない可能性もある。
日本がどこに向かうかは、安倍首相にかかっている。日本に革命をもたらすという安倍首相の選択は正しかった。途中でやめるべきではない。