【ベルリン14日】第64回ベルリン国際映画祭のコンペティション部門に出品されている山田洋次監督(82)の「小さいおうち」(公開中)の公式上映が、メーン会場の「ベルリナーレ・パラスト」で行われ、山田監督と出演する女優・黒木華(はる、23)がレッドカーペットを歩いた。上映終了後、会場を埋め尽くした約1600人の観客から大きな拍手を浴びた山田監督は「これまでの中で、最も温かな拍手でしたね」と作品が地元の映画ファンにも届いたことを確信していた。
1989年の「ダウンタウンヒーローズ」から数えて、今回で9度目の出品となるベルリン国際映画祭。“常連”であっても味わったことのない惜しみない拍手に、山田監督も感動を隠し切れなかった。
上映が終了したのは深夜0時半前。それでも、一人として席を立たなかった観客に向け、舞台中央で三方に深々とおじぎをした。「去年、『東京家族』が上映された時、私は出席できなかったのですが、その時に『小さいおうち』という映画を作っているので、来年ここで上映できればというメッセージを送りました。その願いがかなっただけでも十分です」。約束を無事果たしたが、地元ファンは、想像以上の歓迎ぶりだった。
上映前、実は山田監督には、心配ごとが一つだけあった。「公式上映の時間が遅いんでね。『寝そうになっていたら、起こしてほしい』と(黒木に)言っていたんです。でも、最後まで全く眠くならなかった。僕も興奮してたのかな。拍手の長さとか熱心さは、初めて。儀礼的(な拍手)じゃないのが、よく分かりましたね」。滞在ホテルに戻った後も、映画祭をよく知る関係者に「どの監督の作品も、あんなに温かい拍手が起こるものなのかな?」と質問していた。
現在82歳。以前と同じように、体が動かないことは自覚している。「それなりに衰えてはいるんだけれど、スタッフがいたわってくれているんでね。でも、今日の反応を見てパワーにしたいと思うし、当然そうなる。『もう一頑張りしなきゃいけないな』と思いたくなる拍手でしたね」。最高賞の金熊賞への意欲などを口にすることはなかったが、山田監督自身にとっては、それよりも大切な「83本目の作品への後押し」を手にした様子だった。
[2014/2/16-06:01 スポーツ報知]