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デルタIIロケットの誕生から25年――米国の宇宙開発を支える名機
February 16 - 2014 - デルタ
Image credit: USAF
今から25年前の1989年2月14日、デルタIIロケットの1号機が、米国フロリダ州のケープ・カナベラル空軍基地14A発射台から打ち上げられた。以来、デルタIIは151機が打ち上げられ、149機が成功。軍事衛星や惑星探査機、商業衛星など、220機を超える衛星を宇宙に送り出し、米国の宇宙開発を支えるワークホースとして活躍し続けている。
デルタと名のつくロケットは1960年に登場し、さらにその根源は、1950年代に開発され運用されたソー・ミサイルまで遡る。デルタIIはかつてのソーやデルタロケットとはエンジンからして異なり、外見も似ていないが、徐々に改良を加えられつつ進化した、直系の子孫である。
しかしそれら旧デルタとデルタIIとの間には、一度大きな断絶があった。1981年にスペースシャトルがデビューし、以降の米国の衛星打ち上げをすべて担うことになったため、1982年にはデルタロケットの生産ラインが閉じられている。デルタの運用は在庫を残すのみとなったが、1986年にスペースシャトル・チャレンジャーが打ち上げに失敗、それを受けて米空軍は、全地球測位システム(GPS)の衛星を打ち上げるための新しい中型ロケットを要求、そこにデルタロケットの能力向上型、つまり現在のデルタIIを提案したマクドネル・ダグラス社が契約を勝ち取った。
デルタII、より厳密にはデルタ6000シリーズと呼ばれるロケットは、第1段にRS-27エンジンを使い、その周囲にキャスター4Aという固体ロケットブースターを9基装備している。第2段にはAJ-10-118Kエンジンを装備、オプションで第3段に固体ロケットモーターを搭載することもできる。これらのロケットエンジンやロケットモーターは、すべて旧デルタで使用実績があるものばかりで、大きな変更点といえば、第1段タンクが延長され、推進剤の搭載量が増えたこと、そして新しい衛星フェアリングが装備されたことぐらいである。デルタIIの信頼性の高さはこうしたところから来ている。
また1990年には、デルタ7000シリーズと呼ばれる第1段エンジンと固体ロケットブースターを改良した機体も登場、2003年にはデルタIIヘビーとも呼ばれる、さらに強力な固体ロケットブースターを持つ機体も登場した。
ちなみに、デルタ6000とか7000という名前は、その独特の命名方法から来ている。デルタは4桁の数字の組み合わせで、使われているエンジンや段数などを表しており、例えばデルタIIの1号機はデルタ6925と呼ばれ、これはRS-27エンジンとキャスター4Aを装備し、かつキャスター4Aの数が9基で、第2段にはAJ-10-118Kを装備、第3段にPAM-Dと呼ばれる追加のロケットモーターを装備している、ということを表している。また例えば、2011年に月探査機グレイルを打ち上げたデルタ7920Hであれば、第1段のエンジンがRS-27Aで、固体ロケットブースターはGEM-46を使い、その数は9基、第2段にはAJ-10-118Kを持ち、第3段は無し、ということを表す。
デルタIIはこれまでに2度の打ち上げ失敗を経験している。最初は1995年8月5日、韓国の衛星コリアサット1の打ち上げにおいてで、9基の固体ロケットブースターのうち、1基の分離に失敗、予定していた軌道への投入に失敗した。その後衛星側のスラスターを使い、静止軌道への移行には成功したものの、その分衛星の燃料を余計に消費することになった。
もう一つの失敗は1997年1月16日、GPS-2Rの打ち上げで、離昇から13秒後に大爆発を起こし、破片が射場の周辺に降り注ぎ、車や建物を損傷させるほどの大惨事となった。
とは言え、151機もの打ち上げ数のうち、失敗はその2例だけであり、約99%という成功率の高さ、また1997年の失敗の後は96機連続で成功を続けていることは特筆に値する。
デルタIIはその信頼性の高さから、米空軍や民間企業、そして米航空宇宙局(NASA)に好まれていた。例えば1996年のマーズ・パスファインダーや、2001年のマーズ・オデッセイ、そして2003年のマーズ・エクスプロレーション・ローバーのスピリットとオポチュニティ、2007年のフェニックスを打ち上げたのは、すべてデルタIIだ。ほかにも彗星探査機ディープ・インパクトや、小惑星探査機ドーンなども打ち上げている。
しかしそんなデルタIIも、後継機のデルタIVが登場したこともあり、すでに生産は終わっており、在庫も残り4機となっている。今年の7月に地球観測衛星オービティング・カーボン・オブザバトリー2(OCO-2)を、10月には地球観測衛星スマップ(SMAP)を打ち上げ、そして2016年に地球観測衛星アイスサット2と地球観測衛星JPSS-1を打ち上げ、運用を終える予定だ。
■Factsheets : DELTA II LAUNCH VEHICLE
http://www.vandenberg.af.mil/library/factsheets/factsheet.asp?id=5206
Written by 鳥嶋 真也
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