「53億円かけた新しい病院に医師がいない。宮崎で助からない命が東京でなら助かるかもしれない。これは命の格差だ」。今年1月4日、小林商工会議所などが開いた恒例の新春賀詞交換会で、あいさつに立った出席者の一人が嘆いた。会が新春らしからぬやや沈んだ雰囲気に終始したのは、小林市立病院の内科医不足が顕在化していたからだ。
「医者ですから、少しでも社会に貢献でき、市民の助けになるのなら」。賀詞交換会から3カ月後。4月初旬の平日の夜、小林市立病院に代わって「当番」を引き受けたのは50代の民間クリニックの内科医だった。自院で待機するだけでなく、市立病院に出向いて患者を診ることもある。
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小林市が4月から始めた夜間輪番制。西諸医師会の協力を得て実現した。市立病院の内科医が2月から、派遣元大学への相次ぐ引き揚げで1人だけになり、時間外診療や急患の受け入れが難しくなったことへの応急的対応だ。平日午後7~10時に開業医らが交代で患者を受け入れる。
市地域医療対策室によると、輪番制導入は「住民の不安解消」が第一の目的。同時に市立病院の医師の負担軽減を図り、医療環境を整えることで新たな医師確保につなげたいとの思いも込める。
市立病院の「内科縮小」は周囲の医療機関にも影響を与え始めている。西諸広域消防本部によると、2月の救急車の搬送件数232件のうち、市立病院に向かったのは12%と、それまでの平均23%から半減した。市の担当者は「民間の救急病院などが肩代わりしている状況が歴然」と指摘、「そこもギリギリの状況と聞いている」と医療スタッフの疲弊の拡大も心配する。
市立病院は昨年9月の全面改築に際し、医師の適正数を19人(内科3、小児科2、外科4、整形外科2、泌尿器科2、循環器科2、産婦人科2、放射線科1、麻酔科1)と定めた。
しかし現状は11人(内科1、小児科1、外科4、整形外科2、泌尿器科2、麻酔科1)。
うち6人が鹿児島大学からの派遣だ。「鹿児島市内の病院にさえ派遣できない状態」と大学側からは追加派遣を断られた。今のところ医師確保の具体的なすべはない。
市立病院の関係者は「給料がどうのこうのではなく、働きやすい病院にしないと。せめて当直明けの休みがとれ、好んで働きたいと思われるような病院に」と話し、夜間輪番制の導入を「始まりの一歩」と歓迎した。
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思惑違いは内科だけではない。市立病院内には「3階病棟は閉鎖中」の張り紙がある。3階には外来から入院まで一貫して対応する周産期ゾーンを開設、新病院の目玉にする意向だったが、産婦人科医を確保できず、2003年4月以来の休診は続いたままだ。市内の女性(72)は「里帰り出産する人も多い。いざというときに宮崎市などに走らないでいいような、安心して受診できる病院が欲しい」と憂える。
市区長会連絡協議会の元会長、伊藤正一さん(79)は2月、医師確保への支援を求める約2万5千人の署名を東国原英夫知事に届け、「西諸を安心して住める地域に」と訴えた。一方で、知事から「署名した人の責任も」との宿題を預かり、コンビニ受診の抑制など今後は患者のあり方も考えていくつもりだ。「これからが遠い道のり。(病院の状況を)見守っていく」
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11日告示、18日投開票の小林市長選。堀泰一郎市長が引退を表明し、無所属新顔の3氏が立候補の準備を進めている。4年前の旧須木村、今年3月の旧野尻町との合併で誕生した「新・小林市」の課題を、2回に分けて探る。(知覧哲郎)
<立候補予定3氏の訴え>
●小斉平敏文氏(60)
=元参院議員
医師確保が喫緊の課題。まず鹿児島大学医学部との関係を修復し、西諸医師会との綿密な協力体制をとる。医師の給与や勤務体系は是正しないといけない部分が多い。病院事務部門への市職員の出向はすべて引き揚げ、民間に委託する。地元学生向けに奨学金制度を導入する。
●鮫島憲明氏(60)
=元建設会社長
病院に経営の感覚が足りない。経営陣に民間病院の経験者を起用する。午後8時まで開け、市民への医療サービスを十分にすべきだ。医師確保のためには医師の給与を増やす。宿舎もそろえ、労働環境を向上させる。将来を考えると、今後は宮崎大学医学部とつなぐべきだ。
●肥後正弘氏(64)
=元副市長
民間医療機関による一次診療と公立病院が行う二次診療とを、きちんと整理しないといけない。市民代表や西諸医師会などによる「医療対策協議会」を発足させ、まず公立病院としての役割を明確化する。鹿児島大学や宮崎大学と緊密な関係構築を図り、安定的な医師確保に努める。
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>宮崎で助からない命が東京でなら助かるかもしれない。これは命の格差だ.
>知事から「署名した人の責任も」との宿題を預かり、コンビニ受診の抑制など今後は患者のあり方も考えていくつもりだ。
東京でタライ回しにされた命が、宮崎なら受け入れてもらえたかもしれない・・・
東京なら何でも優れていると考える田舎者丸出しの意見です。
そんなに東京がいいなら、引越せばいいだけの話です。
日本国憲法で居住の自由は保障されています。どこに住もうが自由です。
東京でタライ回しにされても、宮崎で高度先端医療がうけられなくても、
そこに住む自由がある以上、「そこに住んでいる責任」というのも発生します。
>医師の適正数を19人(内科3、小児科2、外科4、整形外科2、泌尿器科2、循環器科2、産婦人科2、放射線科1、麻酔科1)と定めた。
内科が異常に少ないんですが、どんな根拠で「適正」なのでしょう・・・
>「給料がどうのこうのではなく、働きやすい病院にしないと。せめて当直明けの休みがとれ、好んで働きたいと思われるような病院に」
まさにその通りです。切実ですね。どういう病院ならスタッフが集まるのか?病院開設者は真剣に考えてほしいです。設備がいいとか、病院が新しいとか、ハード面も大事ではありますが、ソフト面を重視して頂きたいです。
>3階には外来から入院まで一貫して対応する周産期ゾーンを開設、新病院の目玉にする意向だったが、産婦人科医を確保できず、2003年4月以来の休診は続いたままだ。
甘いとしか言いようがあ
りません。運営側がこんな調子では病院が成り立つとは思えません。
>民間に委託
一見非常に良いことに思えます。でも契約内容については慎重に検討する必要があります。
「これは契約外なのでできません!」と事務仕事が医者に回ってくる病院は永久に人が来ませんよ。
>病院に経営の感覚が足りない。経営陣に民間病院の経験者を起用する。午後8時まで開け
午後8時まで開け、と言っている時点でこの人に病院経営感覚があるとは思えません。経営を重視すると、診断のための診断、検査のための検査、治療のための治療が横行するという想像はこの人にはできないのでしょう。
この3人の中では最後の副市長が一番まともなことを言っています。
変な市長を選んで病院がつぶれても、それは地域住民の責任です。