説明義務違反 患者遺族と示談
むつ総合病院(小川克弘院長)に入院していた30代の男性患者が亡くなったのは担当医師に説明義務違反があったためなどとして、遺族が損害賠償を求め、今月6日に300万円で示談が成立していたことがわかった。同病院を運営する下北医療センター(管理者・宮下順一郎むつ市長)の議会で27日、専決処分が承認された。
同病院によると、男性はうっ血性心不全、心筋炎、睡眠時無呼吸症候群で循環器科に入院していたが、昨年9月、心臓機能不全で死亡した。2006年4月に同病院で初診を受け、約1カ月間入院。
退院後もしばらくは治療を受けたが、通院しなくなり、08年11月に両下肢のむくみで再来院した。遺族側は、治療を中断したのは重症な状態なのに医師が説明を怠ったため、と主張しているという。
遺族側は今年3月に2千万円の損害賠償を催告。病院側は、医師は口頭で病気について説明、医療面での問題もなかった、として裁判で争うことを検討したが、医師への負担なども考慮し、弁護士と相談の上、和解したという。「説明義務違反」で医療紛争となったのは同病院では初めてという。
むつ総合病院は今回のケースを医師らに伝え、
カルテに病気についての説明の事実を記入するよう通知することにした。300万円は加入している病院賠償責任保険から支払われる。
================================
引用ここまで
最近、この本を買いました。
東京地裁の判決によれば
受診を中止した患者に対し、
医師は当該患者の受診中止の原因を突き止め、
適切な助言をして病状の悪化を防止すべき注意義務がある。
そうです。
でも、何十人何百人も外来患者を診ていれば、
中には通院を中止する人も出てくるだろうさ。
裁判所の先生に言わせれば、
医師が患者本人や家族に対する連絡先を把握しており、
連絡が可能である以上は、
患者の意思を確認したうえで説明や説得を試みるべきであるとの
考え方もあり得よう
だそうです・・・・
コンピューターによる完全予約制を取っている病院はともかく、
全部「手書き」で処理している予約なしの中小病院は一体どうすればいいのだろうか・・・
しばらく受診していない患者をピックアップするのってかなり大変な作業で、
電子カルテ未導入の病院にとっては相当な負担です。
そこで、「営業メール作戦」はいかがでしょう??
① 定期通院中、または定期通院予定の患者を最初にピックアップ
② 患者の住所あてに3カ月に1回ダイレクトメールを一斉送付
あるいは電子メール一斉送信
③ 以降、定期通院予定となった患者は「リスト」に追加する。
○○さんへ
最近、だんだん寒くなってきましたけど
体の調子はいかがですか?お薬は足りていますか?
お体の調子で気になるところがあったら、遠慮なさらずに病院に来てくださいね。
○月からインフルエンザワクチンの受け付けが始まります。
これから流行ってくると思いますので、お早めに予約してくださいね。
では、また○○さんの元気な顔が見られることを楽しみにしています。
○○病院 院長
俺の営業メール、センス無いな('A`)
まあ、裁判所で
「俺はメールで受診を促した!!」
と認定されればそれで良いのですが。
どうですか法律の先生方。
認定してもらえますか?
というわけで、
病院からワンサカ営業メールが届く時代になる前に、
「自己判断で通院を中止した場合は、死んでも自己責任」
という判例を作って欲しかったです。
ただ、このケースはカルテに説明の事実が記載されていなかった、
らしいですので、裁判で勝つのは難しいのではないでしょうか。
法律の専門家じゃないけど多分。
ちなみに、僕自身は、営業メールは送っていませんが、
外来患者への説明内容は必ずカルテに書いてます。
被告になりたくないから、当然防衛医療です。
その結果
カルテ書きに時間を取られて、診察の時間は少なくなり
こんなこと↓になります。
http://ameblo.jp/fighting-doctor/entry-10607611536.html
http://ameblo.jp/fighting-doctor/entry-10595041224.html
http://ameblo.jp/fighting-doctor/entry-10595041224.html
昔、胃癌が見つかった高齢男性に、
「胃癌なので大きな病院で詳しく検査して治療しないといけない。紹介状を作っておくので、後日取りに来てほしい。検査結果のコピーを渡すので、御家族と相談してどの病院に行きたいか考えておいて」
と言ったら、数か月来なかった事がありました。
あとから、家族が 「どういうことか説明しろ」 と乗り込んできましたよ( ´艸`)
そのときカルテに
「御本人に胃癌であり、大きな病院で精密検査を行い治療する必要があると説明した。
紹介状を作成するので明日以降取りに来てほしいと話した。
病理検査結果を本人に渡し、家族に見せて、どこの病院に行くか相談してほしいと伝えた」
としっかり書いてあったので、
____
/ \ /\ キリッ
. / (ー) (ー)\ <「カルテ上は、御本人にこのようにお伝えしてあります」
/ ⌒(__人__)⌒ \ 「紹介状も既に用意して、病院名をかいて渡すだけになってます」
| |r┬-| |
\ `ー’´ /
ノ \
/´ ヽ
| l \
ヽ -一””””~~``’ー?、 -一”””’ー-、.
ヽ ____(⌒)(⌒)⌒) ) (⌒_(⌒)⌒)⌒))
こうやって答えて家族も納得していましたが、
もし訴えられてたらと思うとぞっとします。
説明義務違反は死体換金屋が好んで食い物にする所、という印象をもっています。
JBM(判例に基づく医療)が重視される現代では、
法律の素人である我々医療従事者の負担は増えるばかりです。
法律の先生方には、医療の現状を理解して頂き、
現実的な判例を心からお願いしたいです。
法律の先生方が、生や死の扱いに慣れていないのと同様に、
我々もまた、裁判や犯罪には慣れていないのです。