日米開戦、民事訴訟ならルーズベルトは有罪(その1)
2014年三月号の雑誌正論に興味ある記事を発見した。近現代史研究家の渡辺惣樹氏による、「ここまで変わった米国の戦争史観、日米開戦・民事訴訟ならルーズベルトは有罪」というタイトルの論考である。その要旨は次のようなものである。
「アメリカはいかにして日本を追い詰めたか。米国陸軍戦略研究所レポートから読み解く日米開戦史」(草思社)は、アメリカにおける日米開戦史がテーマだ。日本では「開戦の責任は日本にあった」とする東京裁判史観、自虐史観が学会の主流だが、この本では、それとは相反するアメリカの研究者、歴史家の見解が多数紹介されている。
タイトルにもあるように、彼らは「アメリカが日本を追い詰めた結果、日本は真珠湾攻撃に踏み切った」として開戦責任の一半をアメリカに帰している。本は大きく三部構成になっており、その第一部が「米国陸軍戦略研究所レポート」の全文である。
著者は、米国空軍大学の教官で連邦議会上院軍事委員会委員のジェフリー・レコードという国防政策専門家。レコード氏は、アメリカによる通商条約の破棄、石油禁輸、資産凍結と続いた経済制裁で、日本は一九四一年夏の時点で経済が破綻し、大国のステータスを捨ててアメリカに依存するか、戦争をするかの瀬戸際に追い詰められていたとする。
そして、大国としての誇り、プライドを持つ国であれば、アメリカに屈する選択肢は取れなかったと、日本の対米戦争の動機について結論づける。その上で、政治的対立を現実の戦争にまでエスカレートさせた責任は、ひとり日本だけでなく、アメリカも負わざるを得ないと明確に指摘する。
米国陸軍戦略研究所は、陸軍大学の付属機関であり、国の名誉を最も重んじる軍の組織で、こうした見解が公的に示されたことは驚くべきことである。本研究所のレポートは陸軍大学の学生の教科書になる可能性あり、それだけの影響力があるものだ。
そして本レポートは、日米開戦にいたった経緯の分析から、七つの教訓を引き出している。その一つが、「経済制裁は実際の戦争に匹敵しうる」というもの。このレポートは二〇〇九年に発表されたが、アメリカは二〇〇〇八年に北朝鮮に対するテロ国家指定を解除した。その後も北朝鮮が核実験を繰り返しているが、再指定しない。経済制裁は続けているが、ギリギリまで追い詰めていない。このあたり、このレポートの影響とも考えられる。
レコード氏は、「仮にアメリカが当時の日本の置かれた立場になったとして、敵意を持つ国家にその経済を滅茶苦茶にされ、国内経済の首根っこを掴まれたままでいることが想定できるか。戦争に訴えるのは当然」とも述べる。自国の歴史の正当性を巡る議論は感情的になりやすい為、その面の配慮をしながら、彼は日本に対するフェアな態度を失わない。
このレポートも指摘するように、現在我が国学会の主流は、東京裁判史観、自虐史観であり、この東京裁判史観は、勝者による勝者の為の一方的な歴史観である。戦後、70年も経過しようとしているのに日本は、この一方的な歴史観を克服できないばかりか、日本の立場を見直そうとする史観は、逆に「右翼的」と批判されるのが現状である。
勝者のアメリカが、自らの名誉が失われることの危険を冒しても、歴史の真実に肉薄し、そこから教訓を得、それを今日の現実の外交に活かしているとは、見事と言うほかない。我が国の歴史研究も正確な事実に肉薄し、それを現実の外交や政治に活かす努力をしなければならない。お仕着せの事実に立った論争からは、何の成果も得られないのではないか。
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「無題」書庫の記事一覧
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2014/2/16(日) 午前 8:06
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2014/2/14(金) 午後 9:55
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2014/2/10(月) 午後 8:15
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2014/2/9(日) 午前 10:36
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2014/2/2(日) 午前 11:47
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2014/2/1(土) 午後 11:44
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2014/1/31(金) 午前 8:02
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2014/1/27(月) 午後 10:11
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2014/1/26(日) 午後 9:49
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2014/1/25(土) 午後 11:04
コメント(6)
素晴らしいレポートです。先日亡くなられた小野田さんが嘗て「物事には全て原因があり、結果がある」と言われて、戦後の歴史観を批判しておられたことにも通じると思います。
表面だけを見ている多くの日本人に分かってもらいたいものです。
2014/2/8(土) 午後 0:37 [ 栗さん ]
栗さん、コメントありがとう。ご指摘の通りです。アメリカというのは、こういう点で極めて優れていますね。一方的な大国意識だけでない。それに比較して日本の現状は悲しくなります。一番の問題点は、お仕着せの歴史観だから、今日の問題解決に活用できないのです。ただただ、謝罪用の歴史など存在の意義すら疑われます。
2014/2/8(土) 午後 6:52 [ kim**3hiro ]
私も「正論」と「WILL]誌は購入して読んでいます。思わず快哉を叫んでしまいました。戦前に大統領選挙の際、ルーズベルトは不利な状況にもかかわらず何故か勝ち、米国民の85%が戦争反対の意思を示していたにも関わらず、対日制裁を強行して、戦争をけしかけました。小児麻痺の影響か病的に陰湿な(計画的)性格の持ち主です。当時のハル・ノートでは1等国から3等国へ国際的に貶められることになるわけです。戦争か3等国か、現在の認識でも判断は難しいと思います。
日本が戦後68年間戦争をしていない事実を声高に訴え、軍国主義を主張する特定3国(中国・韓国・北朝鮮)を相手にしない(経済的に)政策を展開するべきだ。安倍総理の地球儀外交でインド・東南アジア・南米・アフリカ・EUなどにシフトを変えるべきだ。特に中国・韓国は品位下劣であり技術的に未熟で付き合う必要はない。
2014/2/9(日) 午前 7:10 [ マドロス ]
マドロスさん、コメントありがとう。ご指摘の通りです。中韓がなぜ現在の日本のやり方に異を唱えるのか、それは日米開戦が修正主義的視点では、彼らの政治の正当性に大きな傷がつく、あるいは根本的な疑問符がつく、そのためではないでしょうか。永遠に彼らは東京裁判史観、自虐史観に日本人を閉じ込めておきたいのです。それを跳ね返すのは、日本国民の強い自覚以外にありません。
2014/2/9(日) 午前 10:21 [ kim**3hiro ]
昔から、「日本の右翼」が言っている意見ですね。
自虐史観で勝者におもねる日本の歴史家は、
「奴隷」です。後世に売国奴と呼ばれろ。
2014/2/15(土) 午前 9:10
たつやさん、コメントありがとう。ご指摘のとおりです。私も「日本の右翼」かも。
2014/2/16(日) 午前 7:49 [ kim**3hiro ]