被爆ピアノで平和の歌を熱唱  9・11平和集会

 平和の歌をみんなで歌おう――。9月13日には、平和月間の一環として9.11平和集会を開催しました。当日は、被爆ピアノを広島から運び入れた調律師の矢川光則さんとミュージシャンの原田真二さんという、二人のスペシャル・ゲストを招いての集会となりました。

 まず、矢川さんが被爆ピアノについて説明しました。「今から65年前、世界で初めて原子爆弾が落ちました。その被害を受けた被爆ピアノというのは10台ほどあります。今日は、その中の1台を持ってきました。」今回、来校したのは広島で被爆した国産のピアノで、本体にはガラスの破片が突き刺さった生々しい傷跡が残っていました。
 
 さらに、矢川さんは渡米の経緯についても話してくれました。「10年前から被爆ピアノを使ったコンサートを始めました。今回、初めて海を渡り、ニューヨークに来ることができました。私は被爆二世でして、父は当時、消防士をしており、消防署で被爆しました。アメリカの同時多発テロの際にも、市民とともに多くの消防士の方が犠牲になりました。ニューヨークの消防士と多くの市民の慰霊になればと思っています。」矢川さんは最後に児童・生徒に向けて、「この被爆ピアノの音色が、平和の尊さを考える良いきっかけになればと願っています。」とメッセージを送りました。

 続いて、マイクを手にした原田さんは子どもたちに熱く語りかけました。「みなさん、友達が困っていたら助けるよね。でもね、今、自分のことばかり考える人が多くなってきました。それも、国単位で。自分の国だけが良ければいいという考え方だと、石油や食べ物の取り合いから戦争が起こる。でも、地球は限られた大きさしかないんです。みんなで分かち合って、助け合っていかなければいけないんですね。」

 さらに、演奏するオリジナル曲「大和 The Global harmony」についても説明してくれました。「日本には昔から、和という文化があります。和とは調和、英語にするとハーモニーです。みんなで歌う時、大きい声の人ばかり目立ったら、きれいなハーモニーは生まれない。声の大きさを考えながら、みんなと協力していくことが大切なんです。漢字で書くと大和(やまと)、英語で言えば、グローバルなハーモニーです。お互いを理解して助け合えば、いつか戦争がなくなり、ナイン・イレブンや広島・長崎の原爆のようなことはなくなる。一人ひとりが優しい気持ちを持ち、困っている人がいたら助ける。そういう大きな和の心を歌った曲です。被爆ピアノの音とともに聴いてください。」

 ピアノの澄んだ音色と原田さんのハスキーボイスの絶妙な調和に、子どもたちから大きな拍手が送られました。

 その後は司会を務めた長渡岳志教諭が、「名もなき人の千羽鶴」というエピソードを紹介しました。「9・11の後、誰かが千羽鶴を作って捧げました。その名もなき人の千羽鶴が、遺族の方々による万羽鶴づくりにつながり、最終的に広島から佐々木禎子さんの折り鶴をニューヨークに呼び寄せたのです。」スクリーンには、マンハッタンのトリビュートセンターに飾られた、千羽鶴、万羽鶴、禎子の折り鶴の画像が次々と映し出されました。これらの鶴の背後にある逸話を、児童・生徒は真剣な表情で聞き入っていました。

  集会の終わりには、同校の平和月間のテーマ曲「You Can ~愛の国~」を全校で合唱しました。原田さんが弾く被爆ピアノの伴奏と子どもたちの歌声が徐々に調和していき、最後は講堂を震わせるほどの熱唱となりました。

 集会終了後には、「被爆ピアノを見た時、『かわいそう。こんなに傷ついて。』と思いました。けれども、演奏を聴いた人たちが感動して、平和について考えてくれるなら、ピアノも幸せだろうと思いました。」「『大和』という言葉には、深い意味が隠されているのを知りました。『グローバル・ハーモニー』というフレーズを自分自身も大切にし、平和のために行動していきます。」という感想が、子どもたちの間から聞かれました。平和について考え、行動していくきっかけとして、大変、有意義な集会となりました。
 同校の平和月間は9月23日まで。今後も、講話や合唱などの活動に取り組んでいきます。