風邪に塩りコーラ〜台湾人の智恵袋 | |||||
『塩入りコーラで風邪撃退』 風邪気味なのか喉がイガイガする。 「そんな時には、塩入りコーラさ」 訝(いぶか)る私をヨソに夫はコーラに塩を入れて混ぜはじめる…手を振って拒絶する私…夫は仕方なく自分でそのコップの中身を飲み干した。 「ふー」と満足そうな表情。 これは台湾で知らない人はないほどポピュラーな飲み方である。これで「降火」というクールダウン効果があるというが…この国はコーラが薬として売られていた時代のままなのか? なお、台湾人が風邪の時に特によく飲むのは「沙士 シャース」という種類のコーラである。言うなれば可口可楽(コカコーラ)にサロンパスを一枚落として10回くらいかき混ぜたような風味。沙士は普段から清涼飲料水としても根強い人気だが、風邪の時は特に重宝されるらしく最近は「初めから塩入りタイプ」も好評発売中である。 『子供のツムジが後頭部の中央にあると将来親孝行になる』byホームレス 近所の公園に子供の姿は疎らだが、たまにホームレスが日なたぼっこしていることがある。別に親しくなりたくはないが、小さな公園で私たち親子とホームレスのオジさんしかいないとなると、なんとなく話し掛けられて無視するのも気が引ける。 それで、この「ツムジ親孝行説」はある日そのホームレスから伝授された。オジさんの話しではツムジの高さはどうでもよいが左右の真ん中に位置しているのがポイントだという。光栄にもウチの次男のツムジはホームレスのお墨付き「親孝行ツムジ」である。オジサンちの子供はツムジ曲がりなのか…? 『結婚したばかりの夫婦(及びその家族)はヨソの結婚式に出るな』 誰かの結婚披露宴に招かれて、出席できない理由が「自分も結婚したばかりだから」というのが台湾ではまかり通る。ついこの間も、夫のイトコが台北で披露宴を行ったが、翌日が夫の妹シェリーの披露宴だったので両家申し合わせて「お互い出席しない」ことになった。 この「結婚式出席自粛期間」は家庭により若干違うが、自分の家で結婚式があった日からだいたい4〜6ヶ月ぐらいである。理由は「祝い事どうしがぶつかってお互いのハッピーを傷つけあってしまうから」らしい。 私もこの掟のせいで数年前だが、親しい友人E子の花嫁姿が見られなかった。 『子供の夜泣きには収驚』 ウチの息子らは小さい時から夜中に何回も起きて泣く。長男の夜泣きが収まった頃に次男が生まれたので、私もかれこれ「夜泣かれ歴」5年。クマもすっかり板につき、デパートのお手洗いで鏡に映った人影を見て「どこのオバさんだ?」と思ったら自分だったということも…。 それはさておき、台湾で子供の夜泣きの話を中年以上の人にすると間違いなく「それは何か(ショックなことがあって)驚いてしまったんだ。収驚へ行け」と言われる。収驚(台湾語でショーキャー)は廟へ行って、夜泣き封じのお祈り?をしてもらうことである。 あれは長男が2歳ぐらいだった頃だろうか、騙されたと思って「収驚」へ行ってみた。とある廟で「収驚」をお願いしたら、キョンシーみたいな服を着た道志が出てきて紙の人形(ひとがた)とかを並べ何やらお祈り体勢に。 「なんちゃらーかんちゃんらー、カンカンカン、パオパオパオー!」 呪文をとなえ、鐘をカンカン、ラッパをパオパオ、大音響で息子おびえっぱなしの内に儀式は終了。(確か数百元払った) そしてその夜…騙されたと思って「収驚」へ行ってみたが!…まんまと騙されっぱなし。 『子供の夜泣きには七つの木の芽』by夫の祖母 引き続き子供の夜泣きに苦しむ私。するとそれを聞いた祖母がやにわに表へ出て、そこら辺から木の芽を摘んできた。なんでも、木の芽(どんな木でもよい)を七つ摘んで浴槽に入れ、そこに熱いお湯と冷たい水を半々に入れ、それで子供をお風呂に入れると夜泣きが止むという。ポイントは本人らにこのおまじないのことは内緒にすること。 さっそく、狐につままれた気分でその木の芽を持ち帰り、浴槽の中へ。子供らを湯船に入れたまではよかったが… 「何これ―?」と言いつつ二人の息子は木の芽をむしりまくりの投げまくり。 楽しく風呂で遊んだ後も、夜中に泣く元気はあるらしい…。狐につままれたままオチなし。 『海外へ行く時は自宅の水を水筒に入れて持参』by夫の祖母 ますますスパークする祖母の智恵袋。さすが80歳、何でも知っている。祖母曰く海外で具合が悪くなるのは「水が合わないから」だそう。だから自分ちの水を持参しておき、イザという時にはこれを飲むと必ずやよくなるという。私が子連れで日本に帰る時も、毎度のことながら必ず「水もってけ」と忠告してくれる。 「日本の水は蛇口から飲めるぐらいきれいなんですけど」などど口ごたえはしない。いつも「はーい、OK!」とふたつ返事で応えるのが私のささやかな祖母孝行だ。(実際は水なんて持って行かないけども) 『赤いパンツで勝負』 毎年12月下旬から1月いっぱいまでは台湾の忘年会シーズンにあたる。台湾企業では、忘年会を開いて従業員を慰労し、その席でくじ引き大会などしてプレゼントを振舞うのがならわしだ。景気のいい会社だと、賞品に自動車なんか出す。 私がOLをしていた時も暮れに会社の忘年会があり、同僚たちは料理そっちのけで前に並べられたDVDプレーヤーやノートPCに目を輝かせていた。 そしてささやかれる「赤い下着つけてきた?」の言葉。 中華系の人が赤=めでたい色だとしていることは今や世界の常識となっているが、勝負の時にも赤い服や赤い下着をつけて開運を目指すことが多い。赤ならセーターでもババシャツでも何でもいいそうだ。 最近では日本でも、通販などで「幸運の赤パンツ」などが売られているようだが、これは中国台湾から飛び火したのだろう。 「赤ならなんでもいい」では商売にならないので「赤パンツが!」ってことにしているようだが。 『独身で亡くなった人と生きている人が結婚』 道になぜか紅包ホンパオ(ご祝儀袋)が落ちている。通行人Aが「おぉ♪」と顔をほころばせて拾う。すると、物陰から老夫婦が跳び出してきて… 「ご縁がある方、どうかウチの死んだ娘と結婚してください!」 そして簡素ながら結婚の儀式が執り行われる。これを「冥婚 ミンフン」という。台湾では独身で亡くなった人の位牌を原則的に自宅には置かない。それは冷たいからではなくて、死者が独身だと自宅に位牌を置いても、ゆくゆくは両親も亡くなって誰も供養してくれる人がいなくなってしまう…それを心配しているのである。 だから独身者の位牌はどこかの寺に納められるか、もしくは「冥婚」をした通行人Aの手元に置かれる。Aはその位牌を家族のものとして供養するのが約束だ。ではAはその後一切結婚できないのかというとそうではなく、冥婚相手の位牌を供養し続けてさえいれば、普通にまた生きている誰かと結婚してかまわない。 なお、「冥婚」の相手は別に「通行人でなければ」というわけではなく、死者の生前の恋人でも、知り合いの有志でも問題ないという。通行人を探すのはよっぽど相手探しに行き詰まった時らしい。 現代では「冥婚」の例も段々少なくなっているが、それでもたまにテレビニュースなどで見かけることがある。 『最近風邪引かないね…は禁句』 公園でよく会うアーチャオ君、3歳。以前より丈夫になって「最近、アーチャオは風邪引かなくていいね」と言ったら、そのパパ(茶髪のバンドマン)が慌てて口に指を当てて「しぃー!」 台湾では本人の前でそう言うと、言ったそばから風邪を引くと硬く信じられている。この原則は「望ましい状態が続いている時」はすべて適用される。 私もこの前、姑に真顔で「子供の前で、最近よく食べるとかよく寝るとか言っちゃいけないよ」と釘を刺された。そう言うと、言ったそばからダメになるんだと…ハイハイ。 台湾人の智恵袋は、まだまだ底が見えない。 |
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