したがって、法的には何ら問題はありません。これを問題だというなら、朝日、毎日両社が系列のテレビ局のニュースで行っていることこそ、放送法違反ということになるでしょう。
これを論じるうえで、まず新聞とテレビの性格の違いについて簡潔に説明します。新聞各紙が会社の主張を社説として掲げているのに対し、テレビ局は放送法によってそれができないことになっています。というのは、新聞はだれでも発行が可能ですから、憲法21条の表現の自由に基づく出版の自由が認められているため、自由に主張ができるのです。
一方、テレビは限られた電波を割り当てられた許認可事業ですから、だれもがテレビ局を作れるわけではありません。したがって、表現の自由は一定の制限を受け、放送法によって「政治的公平」が義務づけられているため、特定の政治的主張はできないことになっているのです。
その観点から言えば、テレビ朝日の「報道ステーション」とTBSの「NEWS23」の報道の仕方には問題があるのではないかと、私はかねがね考えています。「報道ステーション」には朝日新聞の恵村順一郎論説委員が、「NEWS23」には毎日新聞の岸井成格(しげただ)特別編集委員が、それぞれコメンテーターとして出演し、純粋な政策的解説を超えて、両社の政治的主張を堂々と展開しています。それに対して、キャスターは反対の議論を紹介するわけでもなく、相づちを打ってうなずきながら聞くというパターンがほとんどです。
つまり、両番組とも朝日、毎日両紙の主張を事実上、そのまま放送しているわけで、これは「政治的公平」を義務づけた放送法に違反しているといえるのではないでしょうか。「政治的公平」を保つとすれば、政治的に意見が対立している問題を取り上げる場合は、意見の異なるコメンテーターを複数出演させるなどして、視聴者に対してさまざまな角度からの視点を提供すべきです。
私は両番組を見ていて、恵村、岸井両氏が明らかに政治的公平さを欠いた発言をしたり、明らかに事実に反する発言をしたりした場合は、両局に電話して抗議し、訂正を求めるようにしています。