そして、彼を選んだ経営委員会も、任命責任を免れない」と進退にまで踏み込みました。
これらの主張にはいくつも疑問があります。まずはこの発言の経緯から指摘したいと思います。籾井氏は記者会見で記者からの質問に答え、「個人的見解だが…」とことわったうえで、先の発言をしました。すると、記者が「これは会長の記者会見の場だから、個人的見解は認めれない」と一方的に決めつけたことから、籾井氏は「それなら発言を取り消します」と答えました。しかし、記者は「取り消すことはできませんよ」とこれまた一方的に決めつけました。
このやりとりは記者の側に問題があります。「個人的見解は認めない」というのなら、籾井氏がそう発言した時点で「認められない」と宣言すべきです。それをせずに、発言を聞いた後で「個人的見解は認められない」「取り消すことはできない」と決めつけるのは、だまし討ちのようなものです。
また、記者会見はNHK会長としてのものであっても「個人的見解を述べてはいけない」などという決まりはありません。本人が「個人的見解」とことわっているのですから、そう受け止めるべきで、記事にも「個人的見解」であることを前提として付記すべきです。朝日、毎日両紙が記事の中でそれを曖昧にして「NHK会長としての発言」として報道するのは、読者に対して正確な記者会見の内容を伝えていることにはなりません。
次に発言の内容についてです。籾井氏はまず、「慰安婦は、今のモラルでは悪い。僕はいいと言っているのではない」と前置きしています。したがって、「現在の認識」としては慰安婦は「悪い」と言っているのであって、「いい」と言ったわけではありません。
そのうえで、籾井氏は「しかし、そのとき(先の戦争)の現実としてあった。この2つを分けないと分かりづらい。個人的見解だが、韓国だけではなく、戦争地域に僕はあったと思う。ほかの地域になかったという証拠はない。