トヨタ自動車や日産自動車など大手自動車メーカーの労働組合が12日、一斉に労使交渉の要求書を経営側に提出、春闘が始まった。13日には電機メーカー大手が要求書を提出。これから3月12日の集中回答日に向けて労使交渉が展開される。自動車や電機の春闘交渉は、「賃上げ相場」の形成に大きな影響を与える。
今年は、トヨタや日産、ホンダは5年ぶりにベースアップ(ベア)を要求したことが特徴だ。ベアの要求額はトヨタが4000円、日産とホンダが3500円。経営再建に目途がついた三菱自動車も12年ぶりにベア(3500円)を要求した。
ベアとは何か、簡単に解説する。たとえば今年39歳の社員の基本給が9万円、40歳の人が10万円だとすると、39歳の人が来年40歳になった時に昨年と同じように10万円もらえることを定期昇給という。これは賃金カーブ維持分と表現されることもある。歳を取るごとに賃金が上がっていく現行の体系を維持するという意味でもある。
ベアとは、この賃金カーブを、維持ではなく、底上げすることである。基本給が39歳で9万3500円、40歳で10万3500円になるイメージだ。一般的に、定期昇給だけでは労務コストが大きく跳ね上がることはないが、ベアを実施すると、全体の底上げになるため、労務コストが大きく上昇する。
ここでいう労務コストとは、月給を支払う原資だけではなく、基本給が上昇することで、それに連動する賞与、社会保障や退職金の負担コストなどのことである。
多くの自動車メーカーはリーマンショック後、設計や製造手法の見直しなどによる自助努力、円安や米国市場の回復、中国市場の伸びなど外部環境の好転によって過去最高益を達成する見通しである。その利益を、働いた報いとして労働者が受け取るのは当然なので、労組が賃上げを要求するのも理にかなっている。賃金が上がれば、元気が出ることも否定しない。
しかし、今春闘を見ていて筆者は違和感を覚えている。
アベノミクスを盲信、政権批判しづらい世の中に
それは、年初にあった日本経団連など経済団体での賀詞交換会で、安倍晋三首相が、経営者にデフレ脱却のために賃上げを求めたことだ。一国の総理が企業に賃上げ要求をすることは珍しい。市場経済の中で国際競争している大企業に対して、総理(国)が企業に賃上げを求める感覚が筆者には理解できない。経団連などに属する日本の大企業は、中国のように政府が統制する国有企業ではないはずだ。
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