使ってないパソコンをNASやVPN、メディアストリーマーにする『Amahi』
家に使い古したPCがあるんだけど、これでホームサーバーでも作れないかな...? なんて人にぴったりのアプリがあります。それは 『Amahi』!
Amahiは、どんなPCでもホームVPNやホームNAS、メディアストリーマーに変えてしまう魔法のアプリです。
Amahiとは?
Amahi は、 Fedora Linux をベースとした、オープンソースのホームサーバー・ソフトウェアです。柔軟でカスタマイズ性に富み、インストールも簡単。プラグインや拡張機能、アドオンソフトウェアも揃っています。モバイルデバイスへメディアストリーミングをしたいなら、Amahi がパーフェクトな答えでしょう。自前のファイルサーバーや NAS を構築したい? ならば Amahi です。外出先からホームネットーワークに安全に接続できる VPN を構築したい? ならば Amahi で完璧。詳しくは、Amahi の機能一覧やプロダクトツアーも参考に。
かなり前にもAmahi を紹介しましたが、あれから長足の進歩がありました。インストールもさらに簡単になっています。起動に少し時間がかかり、設定も少しだけ面倒ですが、いったん稼働すれば、あとは手がかかりません。通常運用なら、コンソールにログインする必要はなく、すべてダッシュボードで管理できます。ダッシュボードには、ネットワーク上の別のコンピューターからもログインできます。
米 Lifehacker ではこれまでも、FreeNAS 8 で自宅NASを構築する方法や、Ubuntu でフル機能のホームサーバーを構築する方法など、古い PC の活用方法を紹介してきましたが、今回もそのシリーズのひとつ。
もし、あなたが上級者で、パーフェクトな NAS が欲しくて、詳細なドライブ管理やアクセス制御を求めているなら、『FreeNAS』をおススメします。そうではなく、ホームサーバーを構築して、VPN やメディアサーバー、ウェブサーバーなどさまざな用途で使いたいなら、『Amahi』がぴったり。インストールも簡単で、プラグインも豊富です。
事前準備
インストールを始める前に、以下を用意してください。
- 最低限の要求スペックを満たすコンピュータ。比較的最近の PC ならまず OK 。
- Amahi のインストールメディア。ダウンロードはこちら から。
- Amahi のインストールコード。Amahi.org にサインアップして取得します。インストールコードは、あなたの Amahi サーバーと、Amahi の中央ウェブサービスをつなげるキーとなります。そのほかにも、ダイナミックホスト名の生成や、アプリのワンクリックインストールにも使います。
Amahi アカウントにサインアップすると、Amahi サーバーの IP アドレスを尋ねられます。まだ Amahi をインストールしてないのに IP アドレス? と戸惑うかもしれませんが、大丈夫。ホームネットワーク上で、別のデバイスに使われていない IP アドレスを適当に入力すれば OK です(通常は192.168.x.x)。数字は大きめがいいでしょう。Amahi をインストールする PC の IP アドレスがわかっているなら、そちらを入力します。ただし、IP アドレスはあとから変更できないので注意。IP アドレスを変えるには Amahi の再インストールが必要となります。
今回は、インストール作業に「Amahi Express installer」を使います。このインストーラーは、事前にドライブの内容をすべて消去します。ドライブ内のデータを残しておいたり、パーティションを切ってインストールしたい場合は、アドバンスインストールオプションを使うか、データをどこかに退避させて、Amahi をセットアップした後に、またデータを戻してください。
Amahi のインストール
Amahi のインストールはとても簡単です。手順は以下。
- このページから「Amahi Express」の ISO をダウンロードして、DVD に焼くか、USB にコピーします。
- CD ドライブもしくはフラッシュドライブから起動し、インストールを開始します。
- タイムゾーンと言語を選び、各種システムオプションを選びます(今回はデフォルトのままでOK)。
- バックグラウンドでインストールが進行する間に、ユーザー名やパスワードの設定、システムのルートパスワードの登録や、ユーザーの作成などを行います。
- 最後に、インストールコードを入力します。このコードは、インストールした Amahi サーバーと、先ほとサインアップした Amahi アカウントを関連付けるものです。バックグラウンドでアカウントの照会が完了したら、再起動を促すプロンプトが表示されます。
- 再起動すると、コンソールのログイン画面が表示されますが、何もせず放置しておきましょう。バックグラウンドでセットアップ作業が進行し、完了次第、自動で再起動します。インストール作業はこれで終わりです。
先ほど設定したユーザー名とパスワードを使ってコンソールに直接ログインも可能ですが、今回は、ネットワーク上の別のコンピューターから Amahi サーバーへログインしてみます。ウェブブラウザで「http://hda/」へアクセスしてください。ウェルカム画面が表示されたら、ユーザーアカンウントをセットアップして、ダッシュボードを開きます。今後も、すべての設定はダッシュボードから行います。コンソールを使うのはトラブルシューティングのときくらいです。
ログインすると、ダッシュボードの「Users」タブが表示されているはず。ここで、ユーザーの作成やアクセス権の設定を行います。Amahi チームが作った、ユーザーアカウントのセットアップガイドが下の動画で見られます。
次のステップに進む前に、Amahi のコントロールパネルへアクセスして、サーバー情報が正しく表示されているのを確認しておきましょう。また、インストールの完了メールも届いているはずなので、そちらもチェック。このコントロールパネルでは、インストールコードの再取得や、Amahi サーバーのダイナミックホスト名の確認などもできます。
共有フォルダとドライブの設定
ダッシュボードにログインして、共有フォルダの設定を始めましょう。Amahi がデフォルトで共有フォルダをいくつか作ってくれています。ただし、ドライブが複数ある場合は、それぞれのドライブに共有フォルダを手動で作成してください。まずは下にある、Amahi チームによる共有フォルダのセットアップガイドを見てください。
Amahi には、デフォルトで、誰でもアクセスできる共有フォルダがたくさん用意されています(books、movies、music、picturesなど)。共有フォルダの設定手順は以下。
- ダッシュボードの一番上にある「Shares」タブをクリックして、共有フォルダのリストを表示します。
- ここで、フォルダの削除やアクセス権の変更を行います。デフォルトでは、すべての共有フォルダが、すべてのユーザーからアクセス可能となっています。特定のユーザーにのみアクセス権を与えるには、「All Users」のチェックを外し、ユーザーリストから権限を与えるユーザーを選んでください。
- 新しい共有フォルダを作るには、「Create a New Share」までスクロールダウンします。フォルダ名をつけ、visibleに設定。フォルダが作成されたら、上記と同様にアクセスを許可するユーザーを登録します。すべてのユーザーにアクセスを許すなら「All Users」のままにしておきます。
- さらに詳細な設定をしたいなら、ダッシュボードの一番上にある「Settings」タブをクリックして、「advanced settings」を有効にします。その後、「Shares」タブに戻ると、共有フォルダを置くドライブや、フォルダのタグなどの設定が可能となっています。
どこかでつまづいたら、Amahi公式のチュートリアルビデオをチェックしてください。
もしあなたが上級者で、サーバーに複数のハードドライブを使っているなら、ディスクの「プーリング」を試してみましょう。複数ドライブを大きな単一ドライブのように使えます。Amahi の wiki に詳しい設定手順が載っています。How-To Geek にも素晴らしいガイドがあります。とはいえ、プーリングはかなり上級者向けなので、今回は解説しません。
Amahiサーバーでできる3つのクールなこと
ファイルとフォルダの共有設定が済めば、あとはやりたい放題です! Amahi で VPN を構築したり、メディアストリーミングをしたり、クラウドストレージなんかも構築できます。それぞれ専用の Amahi アプリを使いますが、すべてダッシュボードからダウンロードできます。
パーソナル VPN の構築
Amahi サーバーの最大の利点のひとつは、パーソナル VPN を構築できることです。VPN の中には、海外のサーバーを経由させて自分の所在地を隠し、地域制限のかかったコンテンツへアクセスできるようにするものもあります。Amahi の VPN は、外出先からの通信をすべてホームネットワーク経由に変換します。地域制限は回避できませんが、公衆 WiFi を安全に使ったり、外出先からホームサーバーのファイルにアクセスできて便利です。カフェやホテルのWiFiを、盗聴の心配なしに使えるのはいいですね。
Amahi はデフォルトで3つの VPN オプションをサポートしています。OpenVPN、Cisco's IPSec VPN、OpenVPN ALS の3つ。それぞれアプリは有料(5米ドル、5米ドル、4米ドル)なので、事前にAmahi クレジットを購入しておきましょう。クレジットを入れたら、あとは緑のボタンを押すだけで、Amahi サーバーにアプリを直接インストールできます。もっとも、有料のインストーラーを使わずに、パッケージをダウンロードして自分でインストールすることも可能ですが、少し手間がかかります。有料版ならワンクリックです。
今回は、 OpenVPNを使いますが、別の VPN クライアントでも OK です。また、iOS、Android、Windows、OS X、Linux の OpenVPN 対応アプリも使えます。VPN 接続に必要なのは Amah iサーバーのホスト名だけです(Amahi コントロールパネルに表示)。ホスト名さえわかっていれば、自宅の IP アドレスが変わっても心配はありません。OpenVPN 公式クライアントのセットアップガイドはこちらにあります。
・メディア・ストリーミング
Amahi には、音楽や動画、写真をストリーミングできるアプリがそろっています。例えば、米 LH お気に入りの写真共有アプリ「Gallery2」。ワンクリックインストーラーはありませんが、セットアップはわりと簡単。Gallery のモバイルアプリを使えば、スマホやタブレットから写真ギャラリーを簡単に閲覧できます。もちろん、ウェブブラウザからもアクセス可能です。
音楽や動画をかなり試聴する人は、4米ドル出して、米 LH お気に入りのメディアサーバー『Subsonic』をワンクリックインストールしましょう。インストールが終われば、ダッシュボードからメディアの追加や、ユーザーの登録、ストリーミング方法の選択などが可能となります。
また、5米ドルでワンクリックインストールできる『Amahi DLNA server』を使えば、Amahi が強力なホームストリーミングセンターに早変わり。インターネットに接続した TV や、ブルーレイプレイヤー、Xbox、PlayStation、AV レシーバーなどを相互接続できます。
・クラウド・ストレージの構築
Amahi のインターフェースが好きじゃない人や、ファイルの共有、同期、管理をもっと簡単にしたい人は、Amahi が『OwnCloud』に対応していると聞いて喜ぶかもしれません。セットアップ手順は以前紹介したこちらのガイドとほぼ同じです。ワンクリックインストールはありませんが、OwnCloud をセットアップして、デスクトップやモバイルにクライアントアプリをインストールすれば、同期型クラウドストレージの完成です。もうほかのクラウドサービスにお金を払う必要もありません。
OwnCloud は独自のダッシュボードとインターフェスがあり、ファイルの共有、カレンダーや連絡先の同期、音楽のストリーミングなどが可能で、豊富なプラグインや拡張機能も備えています。
おまけ:モバイルからのアクセス
外出先から Amahi サーバーへアクセスするなら、Amahi のiPhone アプリや iPad アプリが使えます。無料です(今のところ Android アプリはありませんが、Amahi チームによるとベータ版を準備中とのこと)。とはいえ、特別なモバイルアプリを使わなくても、ダッシュボード経由であらゆるファイル、フォルダにアクセスできます。ダイナミックホスト名さえブックマークしておけば、ウェブからいつでもログインで可能。ログインしたら、画面上部の「HDA」ボタンをクリックするか、検索バーでファイルを探しましょう。共有されているファイル、フォルダ、メディアのすべてが閲覧でき、モバイルにダウンロードしたり、ストリームも可能です。
今回の記事で紹介した内容は、まだ Amahi の表面をなでた程度です。ほかにも、iCal や Outlook カレンダーの共有や、ブラウザベースのファイル検索などにも対応。Amahi の長所は、インストールと運用が簡単で、カスタマイズ性が高いことです。多少の欠点もありますが、自分のホームサーバーを構築したい人は、うってつけのソフトウェアです。
Alan Henry(原文/訳:伊藤貴之)
Title image made using OZaiachin (Shutterstock).
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