UR賃貸「99%赤字、損失30億円」ってどういうこと?

「日本経済の復活」「大胆な規制緩和」といった安倍政権の輝かしいキャッチフレーズとは裏腹に、日本経済はますます官からの支出に依存する体質に変わってきている。独立行政法人「都市再生機構」(UR)によるマンション借り上げ事業のほとんどが赤字であったという会計検査院の指摘はその一旦を浮き彫りにしている。

 会計検査院によると、URが民間マンションを借り上げて再賃貸する「特別借受賃貸住宅」のうち99%が赤字になっているという。現在約30億円の損失となっており、累積債務は100億円程度になる可能性があるという。URはほぼ全額政府の所有となっており、財務状況が悪化すれば国民負担が必要となってくる。このため会計検査院は事態の改善を求めている。

満室前提なのに多数の空室

 URの前身である住宅・都市整備公団がマンション・オーナーと契約を結んだ際、満室を前提に借受料を決めたものの、実施には多数の空室が発生しているというのが赤字の原因である。これは非常に由々しき事態といえるのだが、驚くほどの話ではなく、ある意味で、無能な公務員による税金ムダ使いの典型ともいえる。

 だがもう少し視野を広げてみると、違った景色が見えてくる。マクロ的に考えれば、この事業は税金によるマンション・オーナーへの支援策という形にも解釈できる。本来、空室のリスクを負うべきなのは「民」なのだが、「官」に損失が移転しているのだ。

 実は、こうした事例はURにおいて多発している可能性がある。会計検査院は昨年度、全国でURが開発したニュータウン223ヘクタール分が売れ残っており、その金額は1000億円近くになるという指摘も行っている。最終的な損失はやはり国民が負うことになるが、民間ではこうした無茶な開発は行われることはなかっただろう。だが事業性を無視した官による宅地開発のおかげで、その分の仕事が民に発注されている。これは一種の公共事業といってよい。

 また都心の一等地でもすぐに開発のメドが立たない場所は、地域の自治体などに無償で土地が貸し出されているケースも多い。東京都港区では、URの土地が区に無償で貸し出され、区の予算で弓道場が建設されている。弓道場の施設は民間が所有し区にリースされる予定となっており、大手ハウスメーカーがリース元になっている。こういったケースでは、民間事業者は非常に低いリスクでリース事業を実施できることになる。本来であれば、都心の一等地は純粋な民間資本による活用が模索されていい場所である。