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第三話 ひき逃げの証明に必要なものは?
【短文ミステリー】ひき逃げの証明に必要なものは?(解決編)【難易度:★★★】
 (アンサー)




「え、もう分かったのか?」警部がいぶかしげに聞く。
「はい、もう十分です」そう言うと、榊田は国木田のほうを向いた。

「改めて確認ですが、あなたは飯田少年を轢いてしまった。それは間違いありませんね?」
「え・・・や、まぁ確かに轢いた事には間違いないな。でもあっちが」
「急に飛び出してきた。急いでブレーキを踏んだが、停まりきらずに激突してしまった。そうですね?」
「まあ、そうだ」
「自信を持ってそれが言えますか?」
「え・・・自信も何も、それが真実じゃ・・・」
 少し戸惑ったようだが、すぐに「言えるよ」と言った。

「そうですか。では、現場を見た僕の見解を言いましょう」
 榊田は一旦部屋を見回し、こんな推理を披露した。

「まず、現場は一方通行でした。あなたはその進路に沿って走っていた。それは間違いないですね?」
「え、ええ、まあ・・・」
「一方通行、ということは、当然進路は一定です。僕もその進路に沿って捜査をしました。その結果、少し奇妙なことが分かったのです」
「奇妙なこと?」警部が怪訝な顔をする。
「はい。彼・・・国木田さんは、飛び出してきたから急いでブレーキを踏んだ。そう言いましたね?」
「え、ええ、まぁ・・・」
「ちなみに、現場にはおびただしい量の血痕が残ってました。轢かれたときの出血と見て間違いないでしょう。ですよね、警部?」
「だろうな。他に事件は起きてないし」
「では、少し整理しましょう。国木田さんは、子供が飛び出してきて、ブレーキをかけたが停まりきらず轢いてしまった。もし国木田さんの言うとおりの事が起こったなら、通行方向に沿って歩けば、『ブレーキ痕が血痕の手前、あるいはほぼ重なっている』ことになります。しかし、実際は『血痕よりも後』にありました」
「・・・!」国木田が信じられない、と言った表情を浮かべる。
「説明が矛盾している、ということはこの供述はウソということになります。実際は轢いてしまった後にブレーキをかけたのでしょう」

「く、くく・・・ぐ・・・」国木田が絶望的な表情をしてうなっている。
「警部。あとの徴収お願いします。事実が分かるのもそう遅くは無いでしょう」
「え、あ、ああ・・・」

 榊田は机に突っ伏した国木田とあっけにとられる警部をその場に残し、部屋を出た。




【要約】
国木田は「ブレーキをかけたが轢いてしまった」と言っていたが、それが事実ならばブレーキ痕は血痕の手前か重なった状態で見つかるはずです。
しかし、実際は『血痕から数メートル前方に』ありました。
このことから、轢いた後にブレーキをかけた、そう思ったのです。
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