【ランシット(タイ)木村尚公】名古屋グランパスは15日、タマサートスタジアムでトヨタプレミアカップ、ブリラム戦に臨み、1−1の末PK戦(3−4)で敗れ、昨年に続く連覇はならなかった。前半41分に福岡大から練習生としてキャンプ参加しているDF大武峻(21)が同点ゴールを挙げた。チーム側は大武を開幕戦から特別指定選手として起用することに関して大学側の了解を大筋取り付けており、大武の開幕スタメンが濃厚となった。
「練習生」が今や堂々たる「主力」になった。驚きのゴールは前半41分のCKから生まれた。大武は「練習試合のときから闘莉王さんの後ろが空いていた。そこを意識していた」。ステップバックしてフリーになるとハーフバウンドで右足ボレー。難しいシュートをいとも簡単にネットへたたき込んだ。
「最初は緊張していましたが、試合が進むにつれて自分のプレーができた」。本業の守りでもブリラムの猛攻を落ち着いて何度もはね返した。
これには西野監督も「彼のディフェンスへの信頼は厚い。少しずつ精度も上がってきている」とべた褒め。指揮官自らキッカーを選んだPK戦ではラストの5人目に指名された。信頼度はグランパス生え抜きの若手をもしのいでしまった。
すでに大武はメンバーから外せない存在となっている。久米GMは大武を特別指定選手として開幕スタメンで起用できるよう、キャンプから緊急帰国して13、14の両日に福岡大側と会談を持った。乾監督は「大武本人がグランパスでのプレーを希望するなら」との条件付きで、引き続きグランパスでプレーすることを認めたという。
その大武は「試合に出るなら高いレベルでやりたい」と断言している。16日に一時グランパスを離れて福岡へ帰った後、18日に再び名古屋入りする予定。特別指定の手続きにも支障はなさそうで、大武がグランパスの一員として開幕に名前を連ねることは確実だ。
グランパスでは過去にアマチュアである特別指定選手が開幕スタメンを奪ったケースはない。Jリーグ全体でも極めて珍しいとみられる。合流して10日間でまたたく間に階段を駆け上った大武。その存在自体が、タイ・キャンプでの大きな成果だ。
◆西野監督さえぬ表情
結果はPK負けでも、内容的には完敗に近い。後半はほとんど一方的に攻められての1−1に、西野監督の表情はさえなかった。「攻撃はまだまだ物足りない。前線でためが作れない」と言葉を絞り出した。
右の田鍋、左のダニルソンの両サイドが十分に突破口を開けず、ケネディ、松田、小川の3トップの動きも単発的に終わった。小川は「自分たちで作り出すチャンスが少ない。PKで負けたことより、それが悔しい」と語った。
試合後にDF闘莉王主将は「ブリラム? たいしたことない。自分たちが弱いんだ」と吐き捨てた。タイでの苦い敗北を教訓に、Jリーグ開幕までの2週間で修正するしかない。
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