枝野幸男・前法令解釈担当相(現民主党幹事長)インタビュー
――内閣法制局のあり方を、これまでどう見てきましたか。
「中学生のころ、新内閣の発足時の新聞の閣僚名簿に政治家の面々と並んで法制局長官の名前や略歴が載っているのを見て強い違和感を持った。なぜ内閣法制局だけが霞が関の中で別格なんだろうと。だから、法制局のトップには国務大臣が必要だというのは、僕の長年の持論です。支持者の集まりで『政権取ったら何大臣になりたいか?』と聞かれると、『法律改正して法制局長官やりたい』って言っていたくらいだ」
――国会でも、政治家たちが法制局を別格に扱ってきたのでは?
「政治論としては、法制局側も政治家側も、お互いを都合良く利用してきたということでしょう。でも、憲法論的にいえば、憲法判断の最終決定権は司法にあるにしても、立法府は国権の最高機関で、立法という機能を通じて違憲審査している。行政府の憲法解釈に立法府が縛られるいわれは全くない。逆はあるかもしれないが。 それが、あべこべになってきたのは非常に不思議な話だ」
――大臣が法令解釈を担当すると、恣意(しい)的な変更の危険が生まれませんか。
「それは勘違いでしょう。もともと内閣法制局は広い意味での意見具申機関だから、長官が何を言っても、首相や官房長官が『あれは参考意見です』と言えばおしまい。それは各省の事務次官が色々な意見を言っても最終的には大臣の判断で決まるのと同じことです。担当大臣がおかれても変わらない」
――2月に担当相になってから菅内閣発足で交代するまでの間に、法令解釈の運用を変えたところはありましたか。
「具体的変化はない。法律案作成のプロセスで各省と内閣法制局との調整があり、必要があれば乗り出しますよと閣議で申し上げたが、そんなに頻繁にあったらおかしい」
――内閣法制局と小沢前幹事長が対立した憲法9条の解釈論への見解は。
「コメントを控えたい。ただ、9条に限らず、行政における憲法の解釈は、恣意的に変わってはいけないが、間違った解釈を是正することはありうる。従来の内閣における憲法9条の解釈は、誤解されて受け止められている面が多々あると思っている」
「それに、『集団的自衛権の行使に当たるので憲法を変えないとできない』と流布されてきた話の大部分は、従来の内閣の見解に基づいても集団的自衛権の行使に当たらないと思っている。この点では、私の考え方は法制局とも一致した」
――将来、法律的素養のない人が担当相になったときに問題は起きませんか。
「そうした時の、バックアップこそが、法制局の役割だろう。けんかをする関係ではないし、非常に有能な法律家集団であることには違いない」
(文中敬称略)
えだの・ゆきお
1964年生まれ。東北大法学部卒業後、26歳で弁護士登録。29歳で日本新党から衆院選に初当選、新党さきがけを経て民主党に。鳩山内閣で行政刷新相、法令解釈担当相を兼務。菅内閣発足にともない民主党幹事長に。