2014-02-15
権力の働きと福祉社会
以前このブログで、福祉社会で働く専門家を悪く言ったら「恨みでもあるの?」とブログを読んでくれている人に言われた。「ええ、里親になりたての時に児童相談所に行ったら、心理判定員という専門職の人がOKを出さないかぎり乳児院から里親に赤ちゃんを委託できないと言われて、それ以来、委託を妨害するような専門職はいらないと思っています」と答えたことがある。そんな人は存在する価値のない、横暴な、権力者でしかないだろう。
その後、ミシェル・フーコーを読む機会があって、少なからず影響を受けた。権力というものへの認識が、抑圧するもの、力で抑えるものとは違って、さまざまな形で存在することを知った。近代に入ってからの権力は欲望を誘発させたり、知を形成させたりして機能している。弱い者は欲望によって力に組み伏せられたり、学者や専門家に「いじめられる」構造の元に置かれる。
告発されるものとしてではなくて、監視カメラで見張られるようなもの。権力への従属が内面化してしまう。施設、学校などの場所ではそうした見張られる権力が幅を利かせている。いかにも自由だが、規則を内面化させないと自由が保障されない。
2014-02-13
「明日ママ」第二幕
「明日ママ」のニックネームなどに直接反応して抗議してきた団体が「見守りたい」として事実上の幕引きを行ったが、最近は元施設経験者などからの声が上がりつつある。
スポーツ紙が、『施設で育った元美人市議が語った「明日ママより過酷な現実」』といった記事を載せている。
マスコミは話題を消費する巨大な装置であるが、それがかなり挑戦的なドラマを提供し、次の話題を消費しようとしていると言ったところか。
しかし、当事者たちの声が上がることは望ましい。ネットであれば匿名でも十分力になる。ぜひ発言をしてほしいものだ。単に消費されるにとどまらないように。
考えてみれば、ニックネームの問題などで抗議する怒り方にはどこか偽善的なものがあったのかも知れない。当事者を中心に、もっとドラマを見てみたい、私たちの心情を代弁するドラマなのかも知れない、という声ははじめからあった。
社会的養護はどういうわけか巧妙に隠されてきたと思うのだ。要保護児童は児童人口の550人に1人くらいだが、この数字必ずしも少ないわけではない。みんなが声をあげていけば大きな力になるはず。
2014-02-12
「エネルギー植民地」で思うこと
新聞を見ていたら「エネルギー植民地」の見出しがあった。
自治体ごとに経済が完結するものではないことは分かっているつもりだが、他の地域に押し付けて知らない顔をしている問題は意外に多い。原発以外に、米軍基地の問題もそうだろう。とすれば、福島と沖縄は同じ構造下にあるわけだ。
表面にこそ出てこないが、社会的養護の世界にもこの問題はある。東京の要保護児童が他の地域の施設に収容されている。他の道府県でもそうした例は見られるのだろうが、東京都の場合は人数も多いと思われる。
先日、近くの障害児施設を訪問したら、100%東京の障害児を受け入れている施設だと言うことだった。受託の手当てが高いので、結果的にそういう経営方針になったのだとか。
保護を必要とする子どもが、まるで拉致されるように、都道府県を超えて施設で養育されている。国の手当てに東京都の特別加算があって、喜んで施設は東京都の下請けになっていく。このままでいいのだろうか。
そう言えば、沖縄の米軍基地の問題で、「押し付けておいて金で買いならす」という表現に出会ったことがある。
新都知事、都民はどの程度そういうことを知っているのだろうか。多くの植民地を持っていることで、いかにも平安な日常を無理やり確保していることを。
おりしも、超高齢化社会に向けて、地域診療の仕組み作りが大きな話題になっている。施設から地域へ。高齢者がこれだけ問題になっているのに、障害者や要保護児童の問題については残念ながら影が薄い。
2014-02-08
「明日ママ」の近況
2月5日(水)に厚生労働省の記者クラブで、全国里親会、全養協、慈恵病院の3団体で「明日ママ」に対する抗議を行った。メディア側は60人、テレビカメラ9台というにぎわい。たっぷり2時間の長丁場となった。
施設側から、子どもにフラッシュバックなどがあったことが報告され、それについては日テレ側も書面で謝罪している。国会でも問題となり、厚生労働大臣は、ドラマの与える影響について調査したいと答弁している。
ドラマは、CM提供社も降りている。
抗議を行ってきたこの3団体以外に、昨日「日本子ども虐待防止学会」が緊急要望者を日テレに送ったと言う。
放送をやめてほしい、いや全部見てみないと判断はできないなど、一般の反応はさまざまだが、ポストなどのあだ名は明らかに要保護児童をおちょくっている。多少ドラマを変更しても解決する問題ではないだろう。
社会的養護の世界はあまり社会に知られていない。さらに子どもの声も聞かれることはほとんどない。そういう非常に誤解を受けやすい問題を材料にして作ったドラマとしては安易すぎるとしか思えない。
これを機会に、社会的養護を社会に開いて行く必要があるだろう。ドラマがどんなに安直に作られているかを証明していく必要がある。それに消極的な声が聞こえてくるのは残念なことだ。
_HEINE_KEN_(ツイッターネーム)
去年の記事に書き込んでしまいましたが、こちらに書くべきでした。すみません。
全養協の日テレへの謝罪要求会見には腹がたちました。
まずはあなた達が施設内虐待被害者の元児童に謝罪してからだろうと。
全養協は支援はおろか、一度でも謝罪すらした事ないと思います。
加害者なのに、なぜ被害者ヅラしてるのかと元児童は傷つきます。
追加で。
・記事の田村厚生労働大臣の国会答弁にはそれ以外に、昨年も施設で虐待が数十例あったと言っていました。昔の話じゃないのに昔だ昔だ言う施設関係者には腹がたちます。
・施設出身者であのドラマを肯定している人は多くいますよ。
・施設格差は大きいです。
kino926
「_HEINE_KEN_」さん、コメントありがとうございます。
「明日ママ」の見方はさまざまにあるのだろうと思います。個人的にはあのニックネームなどは決していいことではないと思っているのですが。
被措置児童の虐待については平成21年度から、その件数と事例を国として公表するようになりました。下記のURL
しかし、これですべてであるとは思えないですね。謝罪の問題はもちろんありますが、当事者、元当事者がもっと声を上げるべきですし、そのために関係者が協力していくべきでしょう。国連・子どもの権利委員会は、近年、相談窓口を設置しましたが、無視されています。
(http://www.mhlw.go.jp/bunya/kodomo/syakaiteki_yougo/dl/yougo04-04.pdf#search='%E8%A2%AB%E6%8E%AA%E7%BD%AE%E5%85%90%E7%AB%A5%E3%81%AE%E8%99%90%E5%BE%85%E4%BA%8B%E4%BE%8B'
_HEINE_KEN_(ツイッターネーム)
お返事ありがとうございます。
当事者団体は厚労省の委員会に日向ぼっこが入ったりした事もあり、各団体と仲良くやっていこうという感じだと思うので、過去の事を言える環境じゃない様な気がします。
他の当事者団体も過去には触れたくないような…
施設内虐待にあってトラウマを持ち苦労している人は、当事者団体でも居場所を得られず、泣き寝入りしているのがほとんどでは?と予想します。
全養の会見などから、施設内虐待を謝罪する事はもうないと私は感じています。
当事者団体は施設内虐待の被害元児童を支援・回復できる様なものではないですし、「当事者」の間には大きな線が引かれたと思っています。
kino926
日向ぼっこが審議会の委員に入りましたが、審議会の性格はそれまでの議論を追認するような感じですので、すぐ力は発揮できないかな、と思っています。
でも委員に入ったのは大進歩ですし、児童福祉法などがどのような経緯で改正されていくのかも勉強になるでしょう。
私も委員の経験がありますが、一番気にしていたのは、里親の反応でした。代表で出ているとの意識がありますから。そういう意味では、委員になった人に情報を提供したり、発言の内容にコメントしたり、代表で出ているんですよという自覚を持ってもらうことが大事だと思います。
里親が委員に入ったのも私が初めて。平成19年のことです。まだ最近。そういう意味では、確実に改善されつつあると言えるのかも知れません。
当事者個人ではあまり聞いてくれませんが、団体の要望ということになる行政や政府などは無視することができません。団体を作り、必要な要望を(書面で)作っていく作業が必要です。
今回のIFCO大会にはユースが100人以上も集まりました。そうした人たちが海外の動向も踏まえて、声をあげていく体制を作ることでしょう。
私は、国連子どもの権利委員会に日本政府が報告書を出すとき日弁連などもカウンターレポートを出すのですが、そのカウンターレポートに社会的養護の当事者の声を反映してもらいたいと言うことです。それへの大人の側の応援の仕組みはできつつあります。
当事者や元当事者がなにを主張したいのか、そういうことが本当に大事になってきています。
ぜひ当事者、元当事者の力で、社会的養護の世界を改革していっていただきたいと思っています。
_HEINE_KEN_(ツイッターネーム) 2014/02/15 04:22 施設に今いる人数はそれくらいだとしても、今生きている人で施設にいた経験がある人だったら結構な数になりそうだと思いますが、どれくらいなのでしょうかね?
kino926 2014/02/15 13:24 _HEINE_KEN_さま、コメントありがとうございます。
要保護児童4万人を18歳までの児童人口で割ると550人に1人くらいだったと思います。この1割が里親家庭に来ていますから、里親家庭で暮らしている子どもは5500人に1人。
里親家庭で暮らす子どもや里親に対して、学校や地域が理解するにはいかにもマイノリティだな、と思ってしまいます。
550人に1人の子どもが地域に散らばっていたら、もっとこうした子どもへの理解も進むのではないでしょうか。
多くの都道府県では、こうした子どもを比較的郊外の施設に集めていて、それは一種の隔離機能をはたしていると思うのです。
たとえば、虐待を受けた子どもが保護されると、地域の人たちは「よかったね」の一言で済ましてしまう。その後、子どもがどのような暮らしをすることになるのか、関心を持たない仕組みになっている、と思います。
たぶん、要保護児童と同じく、元要保護児童も割合としては変わらないのではないでしょうか。1000人集まった所には2人の元要保護児童がいる勘定になります。
ただ、進学率が低いとかで、大学生の間でその割合は非常に低いと思います。その代わりに、困窮している社会層では比率が高まるでしょう。
どの社会層にどのくらいの割合で元要保護児童が存在するかの調査があればいいのですが、そういう調査は数えるほどです。
施設から連絡の取れる元要保護児童だけをサンプルにして調査を行い、いかにもそれが全体の調査のように発表しているのをみると、調査という科学的な手法を使いながらまるで実態を反映しない数字が独り歩きしていると思わざるを得ません。
こういう状況を見るにつけ、研究者、学者というのは何をしているのか、怠慢ではないかと思ってしまいます。どうして世直しの方向で学問を使ってくれないのか、と。
_HEINE_KEN_(ツイッターネーム) 2014/02/15 19:50 お返事をありがとうございます。
1000人に2人=0.2%という事は、施設経験者総数は20〜30万人くらいですかね。思ったより少ない印象です。
施設出身者が社会でどうなっているかという調査はしてほしいですね。
私は施設で良い経験がないので、施設とは縁を切っていますし、施設が行う調査結果にはそういう出身者はあまり上がらないでしょうね。
東京都が過去10年間の退所者の簡単な調査をしたとは聞いた事はあります。
結果は知りませんが、全国で、一番は国が、全ての出身者の調査をしてほしいと思います。
施設とは連絡を取りたくないですが、国や研究者が本気で取り組むなら調査に応えるという人も多いと思います。
まあ…暗部を掘り起こす様な事なので、まずないだろうと諦めていますが。
kino926 2014/02/15 21:00 _HEINE_KEN_さま、コメントありがとうございます。
海外では、刑務所や大学など、いろいろな場所でその構成員を調査します。
たとえば、殺人者の境遇に共通するのは、とか。
暗部をこそ公けにして、改善していくことが必要ですよね。