憲法:制定時の真相生々しい新資料 半世紀のベール脱ぐ

毎日新聞 2014年02月15日 05時15分

発見された萍憲法研究会速記録=柏書房提供
発見された萍憲法研究会速記録=柏書房提供

 元貴族院議員らが日本国憲法制定の真相を語った「萍(うきくさ)憲法研究会」(1953〜59年)の速記録が、半世紀以上を経て参議院で発見された。憲法の制定過程については詳細な研究蓄積があり、最近では新資料が見つかること自体、珍しい。専門家は「個人所蔵のものを除けば、今後これだけまとまった憲法関係の資料はなかなか出ないだろう」と話す。

 貴族院はかつて高い権威を誇った。新憲法の審議にも、佐々木惣一(京都帝国大名誉教授)、高柳賢三(東京帝国大教授)、宮沢俊義(同)ら一流の法学者が勅選議員として関わり、当時の新聞は「議場さながら大学の講堂」と報じた。議員の一部には天皇の権限などに関する不満が強くあり、条文修正への動きは審議入り以前から始まっていた。その詳しいプロセスが今回の速記録から判明した。

 占領下で、新憲法は連合国軍総司令部(GHQ)の草案を基に作成されたが、当時その事実は国民に伏せられた。現実にはGHQの意向が強く働いたため、修正を目指した貴族院議員らも院外で私的な折衝を試みた。その結果、「GHQ側が修正を認めた」との報告が行われた貴族院憲法改正案特別委の小委員会も、議事は秘密懇談の形で進められた。

 結局、修正案は否決されたが、速記録にはGHQと交渉した元議員が語る生々しいやり取りもあった。同研究会の話題は、憲法制定の事情から占領終結後の改憲論議まで多岐に及んだ。今後の研究により、さらに新事実が明らかになる可能性もある。【大井浩一】

最新写真特集