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14 Feb 2014 18:44

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「日米安保条約はもはや賞味期限切れ」 日高義樹氏に聞く「いま備えるべき日本の安全保障」論

JBpress 2014/2/14 12:24 井本 省吾

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 井本 そうだとしても、結果的に米軍基地の存在が中国や北朝鮮の脅威を封ずる役割を果たすことになります。

 日高 しかし、尖閣防衛のために米国が戦うだろうか。自分からは、まず戦争はしないでしょうね。尖閣諸島を中国軍やそれを後ろ盾にした漁民が占領しても、米国は手出ししませんよ。

 ただ万一、中国の駆逐艦が出てきて、日本の海上・航空自衛隊と戦闘になったら、安保条約に基づいて米空海軍は戦争に加わる。米軍はそのシミュレーションも作っています。でも、戦闘は海上とその上の空だけに限定しています。尖閣諸島などでの陸上の戦争は考えていないし、中国の基地も攻撃しない。日本の領土そのものを守るわけではないんです。

 だから、沖縄の普天間にいる海兵隊も、実は今の米軍の防衛戦略としてはあまり必要ない。日本は普天間の辺野古移転の話で大騒ぎしているけど、アメリカ議会はもう沖縄から海兵隊を全部引き揚げろ、と言っているくらいですよ。

■米国が恐れるのは、とばっちりで日中戦争に巻き込まれる事態

 井本 米国は日本と中国、韓国の間に緊張が高まっている点を憂慮し、もっと中韓と仲良くしてほしい、軋轢をなくしてほしいと言っています。

 日高 それはそうでしょう。自分から戦う気はないと言っても、日本が乱を起こしたら、安保条約上、とばっちりを受けて日中の戦争に巻き込まれる。そんな面倒はごめんだ、迷惑だということ。日本のためを思って仲良くしろといっているわけではない。

 井本 中国がミサイルで日本を攻撃し、沖縄にある米軍基地を攻撃することもあり得るでしょう。

 日高 米国のシミュレーションでは、対中戦で米軍は圧倒的な優位に立ち、戦闘は10日間で終わります。米軍基地を攻撃したら損するのは中国だから、中国はやらないだろうと思っていますよ。

 井本 それは日本にとってもいいのでは? 

 日高 中国が戦闘をしかけずに尖閣を取った場合、米国は何もしませんよ。海上でも中国船が日本の巡視船にぶつかってきた程度では動かない。キッシンジャーは「中国はosmosis、じわじわと浸透するように相手の領土を奪っていくのが得意だ」と言っている。シベリアも中国人が徐々に住み着いて人口が増え、気がついたら中国領になる。そうした事態をロシアは恐れています。

 井本 沖縄でも中国人が浸透してきているようですが、米軍基地に手出しさえしなければ、米国は我関せず、の態度を取るわけですか。

 日高 そう、日本の領土に近づいた中国船や中国の軍隊は自分で追い返す努力をせよ、ということです。以前の日米安保では「日本に軍事行動を起こさせない」が前提だった。今は「日本が軍事行動を起こして戦争にならない限り、米軍は出ていかない」という形に変わったのです。

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