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<転機の静岡空港5周年>(上)逃げるビジネス客

(2014/2/ 7 11:08)
運休する大韓航空(右)。アシアナ航空(手前)も苦戦=5日、静岡空港

 静岡空港は6月に開港5周年となる。県は2014年度からの総合計画の新基本計画で「4年後に年間85万人の利用」を掲げる方針だが、12年度の利用者は44万6千人。大韓航空の運休も決まり、達成のハードルは極めて高い。節目の年を迎えた空港の課題を追う。

 日韓の政治対立が深刻化する中、就航便のダイヤ編成でソウルの本社などとの調整に追われるアシアナ航空静岡支店。昨秋、就任間もない朴淵求支店長は手元に届いた県内市場動向にがくぜんとした。

 県西部の大手メーカーは社員の毎月の海外出張者が延べ1200人に上るが、成田空港と中部国際空港の利用が半分ずつ。静岡空港は1%しかなかった。

 アシアナは、各国航空会社で日本の地方空港への乗り入れ便が最も多い。国際ハブ空港の仁川を拠点に、日本人客を自社の乗り継ぎ便で世界各国へ運び、収益を上げるのが主軸のビジネスモデルだ。

 開港当初からの静岡空港就航は、全国トップクラスの製造品出荷額などビジネス利用が見込める本県の市場性が背景にあった。だが、期待は裏切られた。

 同支店は、最低でも月3千人と推定する県西部のビジネス需要が静岡空港に向けば、就航便の拡充が可能と説明。10%の取り込みを当面の目標に掲げ、企業回りに力を入れる。しかし、まず成田や中部ありきの県内企業の意識はなかなか変わらないのが現実という。

 競い合いながら静岡―ソウル線をともに支えてきた大韓航空運休の知らせは、こうした中で届いた。朴支店長は語気を強める。「県民はなぜ、自分たちの税金を投入した空港を活用しないのか。県の利用促進策は的を射ていない。われわれの路線維持も限界が近い」

 開港5年の静岡空港は観光依存が続く。全国の空港の平均的な利用客層は観光4割、ビジネス3割とされる。静岡空港はおおむね観光75%、ビジネス15%。国際線に限ってもこの割合は変わらない。

 静岡空港に乗り入れる航空会社の営業戦略と、県内航空需要との間で生じているミスマッチ。その構図が、原発事故や国家間のあつれきのあおりを受け、減便や機材小型化、運休を招き、さらなる搭乗者減につながる悪循環をもたらしている。

 ソウルや上海、台北での乗り継ぎを上手に活用すれば、静岡空港は世界に広がる航空網の玄関口になり得る。民間の富士山静岡空港利用促進協議会は昨年10月から、会員企業の乗り継ぎ便利用に最大1万円を還元するキャンペーンを始めた。静岡経済同友会でビジネス需要の重要性を提言し続けてきた協立電機(静岡市)の西雅寛社長は、利便性の高い発着便の誘致が不可欠とした上で、「エアラインの採算を支える仕掛けづくりにこそ資源(県予算)を投入すべき」と指摘し、静岡空港の就航促進戦略の再構築を求めた。

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