1982年夏、83年センバツと甲子園で連覇を果たし、今年のセンバツ高校野球に27年ぶりの出場が決定した徳島・池田高校の名物監督だった蔦文也さん(2001年死去)の孫・哲一朗氏(29)が、15日公開の映画「祖谷(いや)物語―おくのひと―」で劇場映画の監督デビューを果たす。このほど、スポーツ報知のインタビューに答えた哲一朗監督は「将来的には故郷の徳島で映画祭をやることができたら」と壮大な夢を語った。
「さわやかイレブン」「やまびこ打線」などのニックネームで知られた池田高校の野球部を40年にわたって率いた名将・蔦監督。その孫・哲一朗監督が、祖父とは違った分野で“頂点”を目指す。
池田高校が夏春連覇を果たした翌年に生まれた哲一朗監督。「だから、じいちゃんのユニホーム姿というのは、ほとんど記憶になくて。自転車に乗せられてどこかに連れて行ってもらったり、晩年に闘病生活を送っているイメージしかないんです」。それでも“精神”は受け継いでいると考えている。
「小学校から高校まではサッカーに明け暮れて『これで食べられればいいな』と思っていたんですが、厳しかった。そんなとき、大学で映画のフィルムと出会って夢中になったんです。一つのことにとことんこだわるというのは、じいちゃんに似ているんじゃないでしょうか」。自身も池田高に通った。その後、大学卒業時に製作した16ミリの作品「夢の島」が各方面で注目を集め、今作で“デビュー”となった。
大学時代の友人たちがスタッフにそろい、地元の徳島を舞台にした「祖谷物語」は自主製作に近い作品だが、ヒロインの武田梨奈(22)を始め田中泯(68)、大西信満(38)とキャストは豪華。これも、哲一朗監督の「とことん」が生み出した結果だ。「3人の方とも面識がほぼなかったのですが、自分で所属事務所に電話して、脚本を送ってお願いしたんです」。全員が出演を快諾してくれたおかげで、狙い通りの映像が完成したという。
現在は東京に暮らしているが、故郷への思いは忘れたことはない。「まずは、実績を残して地固めを。その後、自分のやりたい作品を費用をかけてやれるようになったら、また徳島を舞台にした作品を作りたい。そして、徳島で映画祭を開くことができたら最高です」。貪欲な姿勢で、映画界で生きていくことを誓っていた。
◆蔦 哲一朗(つた・てついちろう)1984年6月29日、徳島・池田町(現在の三好市)生まれ。29歳。小学校から高校までサッカー部に所属した後、大学進学のために上京。東京工芸大の授業で映画と出会う。大学の友人らと結成した映画サークル「ニコニコフィルム」の卒業製作として2009年に16ミリ映画「夢の島」を発表。同年の「第31回ぴあフィルムフェスティバル」で観客賞を受賞。
[2014/2/14-06:05 スポーツ報知]