日本の空で、格安航空会社(LCC)が急速に存在感を増している。

 日本に定期便を飛ばしている海外のLCCは、韓国勢を中心に10社を超えた。国内線でも、2年前に日本企業が出資する3社が就航したのに加え、今年5月には中国のLCCが日本法人を通じて参入する計画だ。

 訪日外国人が昨年1千万人を突破した原動力の一つであり、国内線でのシェアも6%強(昨年12月)に達する。既存の航空会社から乗客を奪うより、新たな客をつかまえており、市場を広げているようだ。

 観光振興による経済成長や地域の活性化にとって、LCCは欠かせない。成田、関西の両空港がLCC専用ターミナルの新・増設を急ぐなど、空港経営を左右し始めてもいる。LCCが発展し、国や自治体、関連企業も恩恵を受ける好循環を築いていきたい。

 ただ、気がかりな点がある。経営体力に乏しいLCCが目立つこと、機体の整備など安全への取り組みにほころびが見えることだ。

 日本航空が出資するジェットスター・ジャパンは昨年、基盤強化のために増資を迫られた。LCC大手のエアアジア(マレーシア)と全日本空輸の合弁で発足したエアアジア・ジャパンは合弁を解消し、全日空の全額出資子会社バニラ・エアとして再出発した。

 利用者の声を聞くと、LCCの魅力は「料金の安さ」が圧倒的に多い。一方で、日本は空港着陸料など費用が高い。経営が比較的好調とされる全日空系のピーチ・アビエーションを含め、安定して利益を出していくのは簡単ではなかろう。

 だからといって、安全への目配りをおろそかにできないのは言うまでもない。

 ジェットスターと旧エアアジアは昨年、古いマニュアルを使っていたために機体の点検漏れを起こし、国土交通省から厳重注意を受けた。ジェットスターは一昨年にも、社内規定を満たさない整備士を使っていたとして厳重注意されている。

 大手航空で整備を担当したOBの活用など、安全投資のあり方を改めて点検してほしい。

 航空各社を監督する国交省の役割は大きい。従来の航空会社よりLCCへの安全監査の回数を増やしたりしているが、ささいな不備も見逃さず、きちんと公表する必要がある。

 安全に細心の注意をはらうLCCが乗客に選ばれ、競争に勝つ。そんな状況をつくることが大切だ。