「通院歴もないのに突然、精神科病院に拉致監禁」「自殺願望に悩む患者に首吊り自殺の方法を教える」「女性患者に性行為でイクかどうか、を問診して治療方針を決める」・・・・・・現実の話とは思えないブラック精神科医たちのエピソードが多数収録されている『精神医療ダークサイド』(講談社現代新書)。ノンフィクションの書評サイト「HONZ」で、成毛眞氏が「2013年 HONZ 今年の1冊」に取り上げるなど、発売直後から各方面で話題を集めている。
著者の佐藤光展氏は、読売新聞東京本社医療部で、精神医療の問題を粘り強く追い続けているジャーナリスト。先日も、「うつの痛み」を口実に抗うつ薬の普及を図る製薬会社のキャンペーンをいちはやく取り上げて、大反響を呼んだ。精神医療の深い闇を知る佐藤記者が、過剰投薬につながりかねない「うつ病キャンペーン」の危険性とブラック精神科医たちの衝撃の実態をリポートした。
誰にでもある「肩こり」はうつ病の兆候?
2月1日の読売新聞夕刊(一部地域は2日朝刊)で、「うつの痛み」キャンペーンに批判続々、という記事を書いた。読売新聞のホームページやYahoo!ニュースでも大反響だったので、目にした人は多いだろう。CMなどへの苦情が相次ぐ昨今、「またクレーマーの仕業か」と誤解した人もいたようだが、このキャンペーンの手法には明らかな問題があった。
精神疾患の国際的な診断基準(DSM―5、ICD10)は、痛みをうつ病の主症状とはしていない。ところがキャンペーンは、頭痛や肩の痛みをうつ病の主症状であるかのように取り上げ、うつ病治療へといざなっていたのだ。
頭痛や肩の痛みに悩むうつ病患者は確かにいる。だが、中高年になればうつ病でなくても頭や肩は痛い。今、パソコンに向かってこの原稿を書いている私も、首や肩が凝り、かなり痛い。それに最近は仕事が増えるばかりで、さっさとこなさなければいけないのにやる気が出ない。自殺願望はないが、生きる意味を発見したことはない。こんな状態でダークサイド系の精神科クリニックに行ったら、たちまち「(軽症)うつ病」あるいは「うつ状態」にされて、「肩こりにも効くから」と、このキャンペーンに巨費を投じた製薬会社の抗うつ薬「サインバルタ」を処方されかねない。
- 『絶望の裁判所』著者・瀬木比呂志氏インタビュー第2弾 最高裁中枢を知る元エリート裁判官はなぜ司法に〝絶望〟したのか? (2014.02.13)
- 特別寄稿 『ブラック精神科医に気をつけろ!』 第1回「うつの痛みと過剰投薬の実態」 (2014.02.10)
- 自衛隊と「玉砕」 『日本軍と日本兵』著者・一ノ瀬俊也氏 特別エッセイ (2014.02.07)
- 一人の学者裁判官が目撃した司法荒廃、崩壊の黙示録!『絶望の裁判所』著者・瀬木比呂志氏インタビュー (2014.01.28)
- 米軍が見た日本軍 『日本軍と日本兵』著者・一ノ瀬俊也氏インタビュー (2014.01.17)
- 最低最悪の「モンスター・ドクター」に会わないためにどうすればいいの? 私が出会ったダメダメな医者 (2013.02.12)
- 「うつ病」放浪記---国民病に罹った「私」は、いい医者、薬を求めて彷徨うことになった【第一章】 (2012.09.27)
- 週現スペシャル 医者にも好き嫌いがあるその一言で嫌われる 「得する患者」と「損する患者」ここが分かれ道です (2012.12.10)
- 元医師の父が選んだ「自然死」 【前編】 延命治療は必要ない---医師の親子が考える「理想の死に方」 (2013.02.04)
- 第四十二回 誰もがディスペンサブル (2013.07.14)
-
-
-
-
アスリートと「食」乳製品はカラダにいい? わるい? (2014.02.14)
-
つながる!ソーシャル時代 ヒト・カネ・コト科学技術と一般読者をつなぐ科学ジャーナリズムの役割 (2014.02.14)