こんにちは。以前、他の方に「分離不安」に関して回答しましたので、そちらから引用させて頂きます火。
犬とは「群れ」で生活する動物ですから、家族全員が外出した後に一人ぼっちで留守番する事が大嫌いです。心細さ、恐怖感、とりわけ「誰も帰って来ないのではないか?」という「取り残されてしまう」不安感が一番耐えられない事なんです。「他所の犬は留守番が出来る」と思われるでしょうが、それらの犬達は「不安を抱えながら、大人しく我慢して、帰って来るのを信じて」飼い主の帰りを待っているのです。
中に、こうした「不安な事」に敏感な犬達がいます。こういった犬達は、飼い主がいなくなると、いつまでも鳴き続けたり、破壊行動を起こしたり、そこら中に排泄したりします。酷い場合には、食欲不振に陥ったり、ストレスのあまりに足が爛れるまで舐め続け「舐性皮膚炎(じせいひふえん)」を起こす事もあります。これらの行動は全て・・・犬の行動学では・・・「分離不安」と呼ばれています。
「分離不安」の行動は、飼い主と離れた時に表面化しますが、この傾向のある犬の中には、飼い主と一緒にいる時でさえ「飼い主の後をついて回る。トイレやお風呂にまで一緒に入ろうとする」「ほんの少し犬の視界から消えただけでも鳴き声をあげる」「飼い主が出掛ける素振りを見せただけで不安そうになる」「飼い主が帰宅すると、異常なほど喜ぶ」等々の兆候が見られます。
「分離不安」の原因としては、産まれ付いての性格・気質(神経質)にも左右されますが、産まれてから、早い時期に親兄弟や前の飼い主から引き離された、という経験から起こる事が多々あります。
通常、仔犬は最低でも3ヶ月は親兄弟と生活させる必要があります。しかしペットショップで売られている仔犬達の殆どは2ヵ月半以下の子達です。根本的に、今のペット産業の「儲け主義」の体質が「分離不安」の犬を多く生み出す原因になっているとも言える訳です。
他には、飼い主と常にベッタリした生活を送っている事、飼い主や住む場所が変わった事なども原因となる、と考えられています。
質問者さんが保護を引き受けられたワンちゃんも「分離不安」である事は確実だと思います。
原因としては・・・
1.以前の飼い主との生活が異常に密接なものであった。
2.以前の飼い主がいなくなった事でストレスを感じている。
3.元々「分離不安」の傾向があった。その為に捨てられた可能性も考えられる。
4.質問者さんを新しい飼い主と認識していて、早く自分の欲求を満たして欲しいと思っている。・・・などが考えられます。
ある程度の躾けは受けているようでしょうか?「お手」「オカワリ」「伏せ」程度のコマンドには従いますか?
「分離不安」には三つのタイプがあります。
1.単純に一人ぼっちに慣れていない。一人ぼっちになった事がない。
※「分離不安」の中ではもっとも軽いタイプです。誰かが傍にいてくれれば解消されますので、徐々に「一人になる事」をトレーニングして行けば矯正は可能です。独立心をつける、計画的な外出トレーニングを行う事で解消される可能性は高いでしょう。
2.一人の人との愛情が強過ぎるため、その人と離れる事に不安を感じる。本当の「分離不安」です。
※飼い主と犬が「親離れ」「子離れ」を出来ていません。飼い主がいる状態で、犬を別の部屋に移動させてみる等々、段階を踏んでトレーニングして行かないと、矯正は相当困難です。専門家への相談、トレーニングが必要です。
3.犬が「自分がリーダーだ」と思ってしまい、自分が「保護しなければいけないもの(飼い主)」がはぐれてしまった事に対する不安を感じている。
※飼い主がリーダーになれていない、リーダーとして認められていないために起こる問題です。この場合は飼い主に責任があります。飼い主自身が自分達の行動を省みて問題を見つけ、その上で「犬と飼い主との関係性」を修復する必要があります。こちらも専門家に相談するか、訓練を頼む必要があります。
質問者さんの場合はおそらく(2)のタイプなのではないかと思われます。
以下に説明する方法を試してみて効果がなければ、専門家に相談される事をお勧めします。
【独立心をつけるトレーニング】
1.室内で自由にさせている場合、必ず「オスワリ」をさせ、それから「おいで」のコマンドでついて来る事を許可するようにする。
2.室内のドアなどを利用して、物理的に自由について来させないようにする。
3.ケージ・トレーニングを行う。飼い主が家にいる時でも30分~1時間ほと、ケージに入っている時間を設ける。但し、留守番をさせたい時に、初めからケージに入れるのは、ケージ自体を嫌いになるため、行わない事。
4.「鳴く=飼い主が構ってくれる」と条件付けさせないために、犬が鳴いた時には「無視」する事。逆に、犬が大人しくしている時に、優しい声で「いい子だね」とか「お利口さん」などと声を掛けてあげる。
【計画的な外出トレーニング】
1.通常、外出する時と同じ準備(着替えなど)をし、実際には外出しない。準備をしても犬が鳴かなくなったら、最初は10~20秒ほど、玄関まで行ってみる。次には玄関の外へ出てみる。そしてこの時間を徐々に長くして行ってみる。
2.外出時には、決して「行ってきます」とか「いい子にして待っててね」などと声を掛けない事。黙って出掛ける事。また帰宅時にも犬の事は「無視」し、自分の用事(着替えなど)を終わらせ、犬が落ち着いてから声を掛けてあげる。
以上です。取り合えず、これらの事を試してみて下さい。効果がない場合や、飼い主さんの方が根負けしてしまうようでしたら、もう専門家にお願いする事です。
http://www.vm.a.u-tokyo.ac.jp/koudou/vbhHP
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