安倍晋三首相は13日の衆院予算委員会で、NHK経営委員で作家の百田尚樹氏が東京都知事選の応援演説で一部候補を「人間のくず」と呼んだことについて、問題視しない考えを改めて示した。首相の任命責任に直結しかねないだけに、政権は「経営委員をどうこう言う立場ではない」(幹部)との姿勢を貫き、幕引きを図っている。

 予算委でNHK記者出身の井出庸生氏(結いの党)が百田氏を任命した責任についてただした。首相は経営委が経営委員について12日まとめた「経営委員としての職務以外の場で自らの思想信条に基づいて行動すること自体は妨げられない」「一定の節度を持って行動していく」などとする見解を紹介し、「NHKには放送法にのっとって取り組んでもらうことを期待している」と述べた。放送行政を担当する新藤義孝総務相も「委員は個別放送番組の編集業務を執行できず、個々の思想信条が番組に反映されることはない」と述べた。

 一方、経営委の浜田健一郎委員長は予算委で、12日午後までに百田氏の発言に対して約1400件の反響がNHKに寄せられ、その8割が批判的意見だったと明らかにした。