米国のラッセル国務次官補(東アジア・太平洋担当)は5日、下院外交委員会のアジア太平洋小委で証言し、1月にバーンズ国務副長官と訪中した際、尖閣諸島問題について「中国海洋当局による危険度の高い活動が前例のないほど際だっている」と、中国側に懸念を伝えていたと述べた。

 昨年12月から米政府高官の訪中が相次いでいるが、ラッセル、バーンズ両氏の中国共産党指導部との会談内容が明かされるのは初めて。ラッセル氏は同小委の公聴会で「(中国政府側と)米国が持つ懸念について集中的に議論した」と述べ、中国の東シナ海や南シナ海での行動を問題視していることを伝えたとした。

 具体的には、中国側による①フィリピンと領有権を争うスカボロー礁(中国名・黄岩島)をめぐっての圧力②尖閣周辺での(領海侵入などの)緊張を高める行為③東シナ海で一方的に設定した防空識別圏④領有権問題を抱える南シナ海における外国漁船規制、などについて問題を提起。「これらの行動は地域の緊張を高め、中国の目的について懸念を呼ぶ」と指摘した。

 ラッセル氏は「米国は脅しや威圧、力による領有権の主張には明確に反対する」と強調。その上で、尖閣問題を念頭に「日中が平和的な外交手段を用い、今すぐに解決できない問題はわきに置くべきだ」とし、棚上げ論を主張した。(ワシントン=奥寺淳)