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2014/02/12 22:00
2月9日投開票の都知事選は、舛添要一氏が当選を決めた。都知事の任期は4年。舛添氏は2018年まで、都知事を務めることになりそうだ。また、年齢からみても1期にとどまらず2期以降も続投する可能性は高い。つまり、2020年開催の東京オリンピックに向けての都内の整備を担当するのは、彼ということになる。
招致決定後、猪瀬直樹前都知事の辞任といったゴタゴタによって停滞していた東京オリンピックに向けた都市整備は、ここからが本番だ。それは、同時にオリンピックに向けた風紀取り締まりの開始であるといえる。つまり、オリンピック開催のため、エロをはじめとする、娯楽への規制はここからスタートするのである。
前回、1964年に開催された東京オリンピックの際に行われた、風紀取り締まりのうち最大のものは、1958年に全面施行された「売春防止法」の制定であった。この法律が成立された最大の理由は、オリンピックを前に、外国人に日本の「恥」とされる部分を見せないことが目的であった。取り締まりの対象となったのは、売春だけにとどまらない。1959年にそれまでの「風俗営業取締法」が「風俗営業等取締法」に改定されると、各自治体では、条例による盛り場への規制強化が行われた。東京都では、深夜12時以降の酒類の販売禁止が実施されるなどの規制強化が行われた(この時に「深夜バー」は禁止されたので「スナック」が登場)。
規制の対象とされたのは、盛り場だけではなかった。1964年に登場した若者文化として記録される「みゆき族」は、この年の夏だけで姿を消した。その理由として挙げられるのは、東京オリンピックに向けた風紀取り締まりの気運の中で、所轄の築地警察署が秋口から一斉補導を行ったためだとされている。また、これより前の1961年には、皇居外苑をはじめとする当時の定番だったデートスポットで、夜中にカップルを公然わいせつ罪で一斉検挙するということも行われた。カップルがイチャついているだけで、犯罪になるというのだから、ムチャな話である。1964年には、東京都福祉局が『若い女性の手帖』なるパンフレットを制作し、配布も行っている。これは、オリンピックを迎えるにあたり、若い女性を対象にして、正しい男女交際を説いたもの。このようなパンフレットが真面目に発行されるような世の中が、またやってくるというのか?
現在も続く、不健全図書の指定制度を規定する「東京都青少年健全育成条例」が制定されたのも、やはり1964年のことである。この法律が制定された背景にも、やはり東京オリンピックに向けた風紀取り締まりの気運があったと指摘されている。
2020年のオリンピック招致決定以来、コンビニからエロ本が撤去されるのではないかとの噂は絶えない。しかし、1964年のオリンピックを控えた狂乱を探れば探るほど、その程度ではとどまらないと思える。東京オリンピックの余波で、秋葉原やコミケに規制が入る懸念は、すでにいくつかのメディアで報じられている。このままでは、アキバもコミケも無傷じゃいられないことになりそうである。今後の施策を注視していくことが求められている。
(文/昼間 たかし)
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