策定中の国のエネルギー基本計画で、高速増殖炉(FBR)原型炉「もんじゅ」(福井県敦賀市)の開発計画の全面見直し案が浮上している。
確かにもんじゅを存続させてFBR実現を目指しても、いつ商業化できるのかほとんど見通しは立たないだろう。
ウランを使う通常の原発(軽水炉)の使用済み核燃料を再処理し、プルトニウムを取り出してFBRに使用するのが本来の核燃料サイクルの設計図。もんじゅの役割を大幅に見直せば、プルトニウムの使い道はますますなくなる。
研究を進めてきた旧動力炉・核燃料開発事業団(現・日本原子力研究開発機構)の体質も問題だった。1995年に液体ナトリウム漏えい事故を起こした際、現場を撮影した映像を隠していたことが発覚し、強い非難を浴びた。
もんじゅでは昨年も重要機器の点検漏れが見つかり、国の原子力規制委員会から運転再開に向けた準備の禁止命令を受けている。
もんじゅの全面的な見直しは実証炉、商業炉と続くはずのFBR開発路線の頓挫を意味する。遅すぎるくらいだが、この際、FBRや核燃料サイクルからの撤退も視野に真剣な議論を進めるべきだ。
発電しながら、消費した以上の核燃料(プルトニウム)を新たに生み出すとされるのがFBRで、もんじゅは1994年に初めて核反応が持続する「臨界」に達した。
だがその翌年、冷却に使うナトリウムの漏えい事故を起こし14年間も運転が止まった。
FBR開発には以前からさまざまな疑問点が指摘されてきた。たとえ技術的な問題を解決し増殖に成功しても、プルトニウム抽出にはFBR用の新たな再処理工場が必要になる。サイクル全体では膨大な負担を強いられるのが確実だった。
エネルギー基本計画の議論の中では、放射性廃棄物の量を減らす「減容化」研究のために、もんじゅを活用する案も浮かんでいるという。
放射性物質を含む廃棄物に中性子などを照射し、別のより放射能が低い物質に変化させることを狙うとみられる。
原理的には可能だろうが、それを大規模に行うのもまた大変な困難が伴うはずだ。地道な基礎研究を積み重ねていくのが先決ではないか。
減容化研究をこれから本格化させるにしても、もんじゅが不可欠なのかどうか慎重にチェックして最終的に判断すべきだ。間違っても、もんじゅとその推進組織の「延命策」と受け止められないようにしなければならない。
仮にもんじゅがFBR原型炉としての役割を終えれば、プルトニウム利用を目指す現在の核燃料サイクル路線も根本から問われる。
FBRと核燃料サイクルはいわば表裏一体の関係であり、一方がなくなったら、もう一方も消え去るしかない。