歴史問題:世界記憶遺産巡り非難 慰安婦資料登録の動きも

毎日新聞 2014年02月12日 20時39分(最終更新 02月12日 22時58分)

 【北京・工藤哲】鹿児島県南九州市が、特攻隊員の遺書などを国連教育科学文化機関(ユネスコ)の世界記憶遺産に登録しようとしていることに中国や韓国が反発している。中国は在外公館の大使を動員して各国メディアで安倍晋三首相による靖国神社参拝への批判を展開する中で、従軍慰安婦に関連する資料の記憶遺産登録を目指す動きも浮上。過去の歴史問題に関する対立が、ユネスコにも波及した形だ。

 中国では最近、対日政策について長期的な戦略を立て、韓国などと協力を強めて日本政府を国際的に孤立させる「新持久戦」論を唱える論文が登場。中国政府は今後、各国を巻き込み日本に対するけん制を強めようとするとみられる。

 南九州市は今月4日、市立知覧特攻平和会館に収蔵する特攻隊員の遺書など333点の世界記憶遺産登録に向け、申請書をユネスコ本部に郵送した。市は「世界に戦争の悲惨さを伝えるため」としている。

 これに対し、中国外務省の華春瑩(かしゅんえい)副報道局長は10日の定例会見で「いわゆる『神風特攻隊』の世界記憶遺産申請の動きは、日本軍国主義の侵略の歴史を美化することを意味する。これは世界反ファシズム戦争の成果と戦後の国際秩序に挑戦することであり、ユネスコの世界平和を守るという趣旨にも反するものだ。必ず国際社会の強烈な反対を受ける」と述べた。

 韓国紙「朝鮮日報」も5日付で批判的に報道。日本政府が昨年9月、ユネスコの世界文化遺産に推薦すると発表した炭鉱跡などの「産業革命遺産」では、植民地時代に朝鮮半島出身者が働かされており、韓国が推薦に反対した問題にも触れた。

 また、9日付中国紙・解放日報によると、上海で中韓の学者による従軍慰安婦問題の会議が開かれ、慰安所や慰安婦の口述記録などの関連資料を記憶遺産として申請する方針だという。これとは別に、韓国政府は11日、従軍慰安婦の関連記録を記憶遺産に登録する計画を明らかにした。

 こうした対日包囲網に関し「新持久戦」という言葉が最近、中国で出ている。中国国営新華社通信系の週刊誌「瞭望」は先月、中国建国の父・毛沢東(もうたくとう)が抗日戦争時期に掲げた「持久戦論」を踏まえた「新持久戦」を訴える論文を掲載した。

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