通貨危機に放漫財政、超金融緩和と、近年の世界経済は騒々しい。普通のお金の信頼が揺らぐなか、それを追い風に新種の仮想通貨が広がっている。

 「ビットコイン」と呼ばれるネット上の「お金」だ。

 投機の的になったり、犯罪に使われたりと問題も浮上した。一方で、各国政府の関与が及ばない「ネット通貨圏」としての潜在力も示している。

 似たような仮想通貨は今後も現れるだろう。その利点と弊害は何かを見きわめ、各国が協調して法整備や監視へ向けた知恵を絞る時代が来たようだ。

 電子マネーとも呼ばれる従来の仮想通貨は、銀行や会社が各国の法に従って発行してきた。お金としての価値を裏づける円やドルなどを保有し、その分を電子データ化したものだ。

 一方、ビットコインも電子データだが、特定の発行者はいない。法的根拠も裏づけ資産もない。ネット上で多くの利用者に分散管理されている。

 暗号技術を駆使して発行量を制限する仕組みが、「お金」としての信用状態を作り出している。利用者からすれば、送金の手数料がほとんどないなどの利点があり、匿名性も高い。

 開発されたのは09年だった。昨年春に起きたキプロスの金融危機の際にロシアマネーの逃避先となって脚光を浴びた。

 その後、アルゼンチン、イラン、中国など、各地で利用が増えた。投機にも拍車がかかり、対ドル相場は1年足らずで100倍超の急騰ぶり。全体の時価は総額1兆円程度ある。

 一方で、問題も顕在化した。中国政府などが投機性を理由に禁止や規制に動き、相場は動揺している。売買の集中で取引所が止まるなどシステムの未熟さも露呈した。米国では麻薬取引での悪用が摘発された。

 このビットコイン自体は、最近の通貨不安が生んだ、あだ花で終わるかもしれない。だが、同じような匿名有志の分散管理による仮想通貨の開発は、これからも進化を続けるだろう。

 国ごとの財政不安や政治的な思惑とは無縁の通貨として存在感を増す可能性がある。国境のないネット上の潮流には、各国の協調対応が必要だ。

 まず匿名性への歯止めなど、犯罪防止は最優先だろう。既存の金融制度や税制とも整合する規制や監視を工夫したい。

 投機なら金融商品として扱うべきだし、送金サービスとして監視下に組み込むことも可能だろう。銀行や証券会社との公平さも保ちつつ、どんな国際対応が可能か検討を急ぐべきだ。