♯11〈林昌寺前・他〉
更新日時 2013年10月03日
「初めはね、とにかく見てくださいとだけいうようにしています」と話すのは
『知恵の実』の作家、大野公士さんです。
伊勢町エリア・林昌寺のはす向かいにある作品は、丸太を使った一見シンプルな
ログハウスのよう。屋根には太陽光発電が付いていて、エコハウスなのかな、と
いった感じです。中に入ると真っ暗でなにも見えません。30秒ほど経つと
目が慣れてきて、ほのかなブラックライト中から何かが見えてきます。
これ、実は原子炉をイメージしています。外に出てきてキレイでした、という
方々に作品のコンセプトを説明すると、みなさん顔を曇らせるとか。
ブラックライト点灯のための発電は再生可能エネルギーである太陽光発電。
室内に張りめぐらせた、ブラックライトに照らされた絹糸で
放射能を表現しています。床には蓮の花。
「そんなに難しい問題定義をしたいわけではないんです。
ただ、放射能(に見立てた作品)が目視できる状態で、人は命の何を見るのか。
家に帰って、そういえば…と家族の中で話題にする。そこが大事かな、と」
今回林昌寺前のほかにも、伊参エリア・JAあかづま倉庫向かいの『慧』、
そして六合エリア・日影の『知恵の館』に展示がある大野さん。
この2作品の共通点、展示がガソリンスタンド跡地というところにあります。
作品のかたちは3つそれぞれ違いますが、大量に消費されるエネルギーによって
手に入れたもの、失ったもの・・・。見る人の心を揺さぶります。
大野さんは順天堂大学で解剖学も勉強されており、それを活かした作品も
数多く発表しています。
以前1999年まで毎年開催されていた『嬬恋高原美術展』に参加したこともあり、
中之条ビエンナーレの存在は気になっていたそうですが、前回知り合いに
誘われて久しぶりに群馬を訪れ「しまった」と思ったといいます。
「何で今まで参加しなかったかと。慌てて募集要項を調べて応募しました」
念願叶って今回が初参加、作品を創っていると地元の人にずいぶんと
話かけられたとか。そんなガラクタどうするんだい、から始まって
完成に近づくと楽しみにしてるよ、と言ってもらえて嬉しかったそうです。
「大野の作品はその場で見ないとわからないとよく言われるので
ぜひ作品の前に立って空気を感じてください」
展示場所が分かりにくいから、とお手製の地図を案内看板に貼りながら
笑顔で話してくれました。