意志力をどう鍛えるか、それには三つの方法があります。意志力はプロセスです。三つの側面からこれを見てみます。
まず、意志力は生理的なプロセスです。脳、身体のプロセスであり、このプロセスはサポートできます。すなわち、脳をしっかり守るということです。
次に意志力を心理的なプロセスとして見ます。ゴールを考える、自分の行動を考える、それによって意志力が高まります。意志力の崩壊がなくなることで、ゴールに到達できる可能性が高まります。
また、意志力は社会的なプロセスと考えることができます。特に欧米社会では、意志力は単にベストを尽くして仕事をすることだけが良いのではなく、社会としての義務、コミュニティとしての義務、家族の義務と捉え、互いにサポートし合います。このように意志力には社会的側面があり、お互いに助け合い、意思決定をし、そしてゴールに到達します。
生理的、心理的、社会的、この三つのプロセスから、コミュニティの中で自らを鍛えていくことができます。
○身体を整え、意志力を整えられる生理的プロセス
まず、意志力を生理的なプロセスとして考えます。
身体的なプロセスでは、呼吸の仕方を変え、どこを集中させるかで、意志力を制御できます。私は何年もかけて呼吸法を研究し、人にも教えてきました。その呼吸法とは、意志力を身体で考えるように呼吸に集中し、ゆっくりゆっくり呼吸します。1分間に4回から6回ほど呼吸します。すると、前頭前皮質あたりの意志力のある脳の部分と、心拍と、呼吸が統合されます。そして脳と意志力が制御できるようになります。研究によると、たった1分間やっただけでも、脳の中や身体の中が変わると言われています。
ただし、静かに長く座っていることだけで、意志力はそがれてしまいます。良い身体になっていくには、少しアクティブになってください。身体をアクティブにし、脳に集中しようとすると、意志力はすぐに高まります。
なぜならば、エクササイズで脳は発達します。脳の思考中枢が高度化するからです。例えば、15分に1回立つ、散歩をする、あるいはもう少し体系的にエクササイズすることで、自らを向上させることができます。
実は、睡眠も意志力に影響を及ぼします。睡眠が足りていないと、脳は意志力をなかなか使えません。また食事も、いつ食べるか、どれだけ食べるかが大きく影響します。お腹が空いていたり、血糖レベルが上がったり下がったりすると、ベストの状態になりにくく、血糖値が下がると脳の機能も低下します。お腹が空いている時は、論理的な選択ができません。
意志力を生物学的なプロセスと考えて、身体を整えれば意志力も整えられます。
○三つの心理的プロセスを理解し、力を強くする
意志力は心理的なプロセスでもあります。トレーニングし、考え方を変えれば、目的・目標に早くたどり着けます。また、このプロセスは、三つの心理的な力に分けて考えられます。
まず一つ目の力は「望む力」です。これは、大切なことを覚えておこうとする力です。私たちは、気がそれてしまったり、他の優先順位に直面したりします。また、身体が疲れたり、誘惑にかられたりもします。そういう中で、自分にとって一番大切なゴールは何なのかを覚えていられるかどうかは、この力をどのように付けるかです。
二つ目は「やらない力」です。これは誘惑を拒絶する力です。気がそれるようなことを拒否する力、NOという力です。YESと言いたいけれども、断ることができる力です。これは、みなさんが考える一般的な意志力ではないかと思います。
三つ目の部分は「やる力」です。私はYESパワーと呼んでいます。やるという力、何かをやろうという力、YESという力です。難しいことでも取り掛かろうという力、身体にとって辛いことでもやろうという力です。
選択を迫られた時には、このやる力、やらない力、望む力の三つが一体となって機能します。このプロセスを理解し、意識的にやれば、自分が何を望むかがはっきりとわかってきます。阻んでいるものは何なのか、近づくためにはどうすればよいかが分かってきます。ゴールにたどり着ける可能性も、目標すべてを達成する可能性も高くなります。
心理学者 スタンフォード大学講師
ケリー・マクゴニガル 氏
講演日:C&Cユーザーフォーラム&iEXPO2013基調講演(2013年11月15日開催)より
H.I.さん
サテライト会場だったため、ご本人の声での講演が聞けませんでした。
会場では、動画のアップもされるというお話でしたので楽しみにしているのですが、まだの様なので早めにアップされる事を期待しております(もちろん、肉声での英語版をお願いしたいです)
2014年02月10日 15:35
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