クイズを一つ。福島県への観光客はどの都道府県の人が最も多いでしょう? 答えは福島県。意外と言えば意外で、地元の観光は実は地元の人が支えている▼観光庁の2012年統計によると、福島県の宿泊施設を利用した人の居住地別割合は同県が35.3%でトップ。2位の東京都を13.4ポイント引き離している
▼福島県の観光業は福島第1原発事故の風評で苦戦が続く。12年の宿泊客は事故前の10年の89.9%にとどまる。しかも多くは除染、復旧工事の作業員で、観光目的の客は限られる▼行政は客の呼び込みに躍起だ。放射能への誤解を解こうと、全国に向けて安全性をアピールしている。キャラバン、海外セールス…。県の新年度予算には誘客事業がこれでもかと盛り込まれている
▼県内観光振興の最大の貢献者は県民だ。よそに目を向けるのもいいけれど、足元を見詰めることを忘れてはならない。県民は観光地の安全性を理解しており、偏見解消に労力を費やす必要もない▼観光収入の柱は宿泊だ。客単価が高く、波及効果もある。県内には国、県、市町村合計で5万人の公務員がいる。各人が年1回、県内の1万円の宿泊施設に泊まれば5億円が落ちる。率先垂範。観光再生に貢献できるし、何より本人が楽しめる。