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[対談:家入一真×鶴田浩之①] 面白いWebサービスづくりの基本は、「拝借」と「熟成」の掛け合わせにアリ

2011/07/29公開

 
プロフィール

株式会社ハイパーインターネッツ  代表取締役
家入一真氏

1978年福岡生まれ。22歳の時に合資会社マダメ企画(後の株式会社paperboy&co.)を設立。個人向けレンタルサーバー事業『ロリポップ!』などで成功を重ね、ジャスダック上場。2009年には株式会社パーティカンパニーを設立してカフェやレストランを展開。2011年より現職。マイクロ・パトロン・プラットフォーム『CAMPFIRE』をリリースして話題に

プロフィール

Labit inc.  代表取締役 CEO  慶應義塾大学環境情報学部在籍
鶴田浩之氏

1991年長崎県生まれ、20歳。2004年、13歳からWebサービスを作り始め、16歳で起業、独立。今年3.11東日本大震災の夜、停電中の避難所で『prayforjapan.jp』を設立、600万人がアクセス。講談社から『PRAY FOR JAPAN – 3.11 世界中が祈りはじめた日』を監修/出版。2011年、株式会社Labitを創業

 

―― 今回の対談テーマは「新しいアイデアをどう生み、どうサービスにするか」ということなんですが、お2人には共通して次々と新しいアイデアを生んできたイメージがあります。どんなスタイルで日々仕事に取り組んでいるのでしょう?

家入 鶴田くんはとにかく行動が速いよね。『prayforjapan』の時は驚いたよ。

鶴田 きっかけは本当に身近なところにありました。 ブログにも書いてるんですけど、3・11の時は自動車免許取得の合宿で仲間と(栃木県の)那須にいて、そこで震災を体験したんです。停電中の一時避難所で、Twitterだけが唯一の情報チャンネルで、いろいろな情報が飛び交う中、海外から寄せられている応援メッセージの数に圧倒されて。「この動きを可視化できるWebサイトを作りたい」と思って、2時間後にはサイトを公開しました。

家入 へぇー。

鶴田 その後アクセスが集中した時には、サーバをレンタルしていたpaperboy&co.の方にめちゃめちゃお世話になりました。

お互いの「発想を膨らませていく流儀」を語り合う家入氏と鶴田氏。アイデアの源泉はそれぞれ異なる

お互いの「発想を膨らませていく流儀」を語り合う家入氏と鶴田氏。アイデアの源泉はそれぞれ異なる

家入 あの大震災の直後にそういう視点で物事をとらえられるところとか、すぐにアイデアを実行できちゃうところがすごいんだと思う。僕の場合、自分自身は全然アイデアマンじゃないし。

鶴田 えっ、そうなんですか? じゃあ家入さんはどうやってサービスづくりの発想を膨らませるんですか?

家入 例えば普通に飲みの席とかでも、いろんな人が思いつきで話をするでしょ。「こういうサービスがあれば良いのに」とか、「こんなことができたら絶対ヒットするよな」とか。でも、たいての場合、言い出しっぺはそういうアイデアを形にしよう、なんて考えてない。僕はそういうのをパクって生きてきた(笑)。鶴田くんはどうなの?

鶴田 僕、実は発想から実現できそうなアイデアにしていくまで、2週間とか2カ月とか、長いときは2年間かけてじっくり”熟成”させるタイプなんです。それで、自分の中で何となく全体像がイメージできてくる、ある”域値”に達したら、そこから先は家入さんと同じです。人と話したり、アウトプットを重ねながらアイデアを膨らませていきます。

「ポリシーのあるパクり」が目新しいサービスを生む

家入 そうなんだね。僕は基本的に思いつきとパクりで生きてるからなぁ。

家入氏の手掛けた最新作『CAMPFIRE』は、支援額とパトロン(支援者)の人数がリアルタイムで見える点も面白い

家入氏の手掛けた最新作『CAMPFIRE』は、支援額とパトロン(支援者)の人数がリアルタイムで見える点も面白い

鶴田 (笑)。『CAMPFIRE』もそのパターンなんですか?

家入 あれは飲みの席でパクったわけじゃないけどね。アメリカに『Kickstarter(キックスターター)』という資金調達のためのソーシャルサービスがあって、あれを見つけたのがきっかけ。

鶴田 あのサービスは確かに新しかったですよね。

家入 1円ずつでもいいから、ネットを通じて世界中の人に支援をしてもらい、パトロンになってもらおう、という発想を知った時には「これはっ!」って思ったね。ただ、そこで考えたのは「もっと日本人の価値観やカルチャー、感性に合うサービスにしたらどうなるんだろう」ってこと。それで、なら日本人のオレが作っちゃおうと。

鶴田 家入さんが作ってきたものって、「人を応援するサービス」が多いですよね。レンタルサーバの『ロリポップ!』もそうでしたし。僕が中学生のころからWebの世界に入れたのは、『ロリポップ!』:のおかげなんです。学生はお金がないですから、お小遣いでサーバをレンタルできるこのサービスがなければ、何も作れなかったはずです。

家入 僕、もともとは絵描き志望だったんだよね。でも学生の時に分かっちゃったの。「オレ、才能ねーな」って。だったら、クリエイティブ分野で頑張ってる人を応援する側に回ろうと。だから、そういうサービスが多いんだと思うよ。paperboy&co.でも、「Webで何か面白いことしたい」って人に向けて、「じゃあ安く用意するから活用してよ」という気持ちで『ロリポップ!』をスタートしたんだ。

鶴田 「場所は用意するから使っていいよ」という発想って、ここ(注:この取材は家入氏がオーナーを務める渋谷『ON THE CORNER』で行われた)とか、カフェ事業でも一緒ですよね?

家入 そうそう。そうなんだよ。

ディテールを詰める作業にこそ魂が宿る

―― さきほど家入さんが言われた「日本人の感性に合うように」という『CAMPFIRE』の発想は、具体的にはどういう部分に活かされているのでしょう?

「発想のきっかけは『パクり』でも、その後のアレンジはけっこう真剣に考えますね」(家入氏)

「発想のきっかけは『パクり』でも、その後のアレンジはけっこう真剣に考えますね」(家入氏)

家入 うーん、何て説明したらいいのかな……。まぁ、例えば、「こういう音楽をやってるので支援してください」とか、「こういうファインアートを作っているので支援をお願いします」とかって、ただ文字で頼んだってピンとこないでしょ? 特に支援慣れしてない日本人には。

世界を対象にしたサービスだけど、まずは日本にいるパトロン予備軍に「面白いな」って思ってもらって、ファンになってもらう工夫をしなきゃいけないと思った。

鶴田 なるほど。

家入 だから、支援をお願いする側には必ず動画でアピールをしてもらっているし、ファインアートみたいなジャンルなら、有名なファッション誌とかとコラボしながら見せたりと、ケース・バイ・ケースでファンを増やす取り組みを変えています。そこには力を入れてますね。

――なるほど。ただアイデアを形にするだけではダメで、その後の工夫があってこそ魂が宿るといったところでしょうか。鶴田さんの言う「熟成」が、後工程にあるというか。

鶴田 そもそも家入さんって、Webサービスづくりに失敗したこととかないんですか?

家入 いやいや、それこそいっぱいあるよ。paperboy&co.時代にノリで作っちゃったSNSとか。『キヌガサ』ってヤツだったんだけど、あまり流行らないままサービス終了しちゃった。

鶴田 『キヌガサ』の名前だけは聞いたことがあります。

家入 鶴田くんの世代は知らないかもしれないけど、昔、プロ野球に衣笠祥雄って選手がいてね。この人が連続出場の世界記録とか作って「鉄人キヌガサ」って言われてたの。なぜかそれにインスパイアされて、「衣笠さんの名前を借りて『鉄人同士がつながるSNS』を作っちゃおう」と。

「鉄人同士がつながるSNS......すごくオモシロそうですけどね(笑)」(鶴田氏)

「鉄人同士がつながるSNS……すごくオモシロそうですけどね(笑)」(鶴田氏)

鶴田 へぇー。

家入 立ち上げたころ、ちょうど映画の『キル・ビル』が流行ってたから、バナーもそれ風のデザインにしてさ。オーレン石井役の女優の台詞だった「やっちまいな!」をパロって、「つながっちまいな」ってね(笑)。

鶴田 面白そうだけどなあ。ダメだったんですか?

家入 うん、全然流行らなかったよね(笑)。そんな具合に、いろいろとハズしちゃったものがたくさんあるんだよ、僕にも。だから僕のブログのタイトルにも「悪ふざけ連続起業家」って書いてるし。それよりも、『prayforjapan』の話をもっと聞かせてよ。
(次ページに続く)

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>>[対談:家入一真×鶴田浩之②] 本当に使えるアイデアは、「遊び」と「抑圧」の際(きわ)で生まれるもの


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