ハッピーさん(@Happy11311)インタビュー ~東京電力福島第一原発収束作業の現場から、作業員の訴え

2014年02月08日(土) 堀 潤
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---そんなことが今も続いているのですか?

最初のうちは急がなくてはいけなかったので、仕方がなかったんです。ただ、方針転換するべき時期はそうだな、野田総理が出した収束宣言以降くらいでしょうか。応急処置が一段落した2011年12月以降の作業というのは、その時点でさらに品質レベルをアップできるはずでした。しかし、実際にはコストをかけずに収束作業を続ける道が選択されました。

東電からはメーカーに対して、「こういう物をこういう風にしたい」と仕様書がくるのですが、話し合いの中で、高いコストの物はどんどん削られていってしまいます。安全性を追求したグレードが高いものをつくるには、当然、付加価値がつくので、東電が示す予算内でやろうとすると外していかざるをえないんです。

高度な設備を作るにはある程度の額が必要になりますが、我々の方で「もっとこうしたい、ああしたい」というと「お金がない」ということになってしまうわけです。

---アレバなどの外国製の機械が早い段階で投入されましたよね。日本の技術レベルは実際にはどの程度のものなのでしょう。

世界に比べて劣っているとは思いません。アレバ社やアメリカの設備よりもずっと使えるものだと思います。アレバの機械はほとんど使いものになりません。というのも、聞くところによると、アレバ社の仕様を東電側もよくわかっていないのというのです。つまり、機能を使いこなせていないと。

買ったはいいけど使いこなせていないというのです。何かトラブルがあったら、いろいろと聞きたいですよね。ところが、アレバに問い合わせても企業秘密だから教えてもらえないといいます。結果的にアレバの装置は使えないという訳です。アレバ側が情報を囲っているというのが実態です。

1号機、3号機のがれきの撤去が終わっただけ

---東京電力はどうして非常事態にもかかわらずコスト削減にこだわったのでしょう。

それは、やはり、どうしても黒字にしたかった、ということです。目標を打ち出していましたから。2013年には何が何でも黒字にすると。

僕自身はそれを聞いて「えっ?」と思ったけれど、銀行や株主との問題があって、経産省の中でも潰したらやばいねという官僚がいたのだと思います。

結局、黒字化を実現するためには、メンテナンスのコストを抑えていくしかありません。イチエフにかける予算というのは年間で決まっていると聞いています。メーカも、東電から「年間でここまでしか使えない」という言われ方をすることがあります。それは来年でよいですよと。

---不測の事態なのに予算に沿った運用なんですね。

本当に緊急でないとお金が出てこないんです。海側で汚染水を止めるための水ガラスの工事などは、どんどん発注していましたが、そちらに年間予算をとられてしまい、その他の行程にはお金が回らず延び延びになってしまう。

サブドレンピットのくみ上げの問題も、本来であれば6月くらいからですが、それも遅れていたし、建屋の中の作業も技術的な問題もあるにせよ、実際には進んでいない。1号のカバーリングもはじまっていますが、その後が続きません。2号も温度計までは入れたのですが、それ以降の作業が進んでいません。

---多少お金をかけても収束作業が進まないと、本末転倒ではないでしょうか。

リスクの考え方が違うんですよね。例えば配管とかタンクでいうと、メーカー側は「どうせ造るんだったら汚染水が漏れない、良いものを作ろう」と思います。今のうちに、耐用年数の長い、水が漏れないものを造って納めようと。しかし東電からしてみれば「漏れた時に対策すればいいだろう」と。そういう考え方の違いがあります。

汚染水が漏れたら大きな問題になるという認識があまりない。「今、側溝で14万ベクレル出てますよ、海に出ていますよ」という状況であっても、「環境に影響ないですよ」と言えば、当面のリスクは回避されるという考え方なんでしょうね。限界点の大、中、小というか、必要最低限のリスクを回避できればいいという姿勢です。

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